接着斑はアクチン細胞骨格と細胞外の足場(基質)を連結するが,動き続けるアクチン構造の動力を,どのように足場に伝達するのかは不明であった.本稿では,ごく一部の接着斑分子タリンが確率的に起こる結合によりアクチンと足場を連結し,流動力により引っ張られて解けることで動力を伝える,新しい力伝達機構を紹介する.
線虫(Caenorhabditis elagans)は,実験室内で最もよく調べられているモデル生物の一つであるが,体長1 mmほどの足や羽といった運動器官をもたない線虫がどのように世界中に広まったのかは謎の一つとなっている.本研究では,線虫は周りの昆虫などがもっている静電場を利用して,高速にしかも複数で跳躍できることを紹介する.
日本生物物理学会は1960年に設立され,早くから物理学と生物学の融合を推進してきた.国際純粋・応用生物物理学連合(IUPAB)は1961年に設立され,今年(2024年),京都で第21回国際会議(IUPAB2024)を日本生物物理学会第62回年会と共同開催した.この機に,当学会の二つの刊行誌,本誌「生物物理」およびBiophysics and Physicobiologyの編集委員会は,将来の生物物理学者が今を振り返ることができる「タイムカプセル」を企画した.国際会議の前日に,国内外の7人の著名な研究者が一堂に会して,生物物理学の未来を予見し,若手研究者や次世代にメッセージを残すべく座談会を行った.この記事は,その議論の後半部分である.