生物物理
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編集後記
編集後記
藤原 郁子
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2025 年 65 巻 2 号 p. 121

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本号は「動きと力」を生物物理学的に探求している.細胞接着部位にかかる力学的負荷に対するタンパク質の応答が,アンフォールディングを介して外力を緩和する緩衝材やメカノセンサーとして機能すること,また線虫の跳躍に静電気が利用されているという驚くべき発見など,生きものが力学的な運動を行うために,さまざまなエネルギーを巧みに用いることに感嘆させられる.

この生体のエネルギーに関する話題に加え,本号では,50年後の生物物理学の展望として,IUPAB2024に参加した国内外の研究者による座談会の記録を掲載している.AIの活用にとどまらず,宇宙や進化といった多様なテーマについても活発な意見が交わされた.まさに『ヒトとの出会いが未開拓の研究課題を生み出す可能性(本号のシン・私が影響を受けた論文)』を感じさせる内容である.会話形式で進められたことで,各研究者の個性が際立ち,極めて興味深い議論となっている.

また,IUPAB2024の運営に込められた思いや,その舞台裏についても本号で紹介している.大会の誘致から実施に至るまで,10年以上にわたる綿密な準備と努力が実を結び,学術的な交流に加え,ランチョンセミナーやソーシャルイベントを通じて,参加者同士の活発な意見交換とネットワーキングが一層促進されたことは感慨深い.また本号のキャリアデザイン談話室にも通じるが,予期せぬ環境の変化にも柔軟に対応し,適応していく力が重要なことも感じさせられ,ぜひご一読いただきたい記事である.そして,このIUPAB2024の準備・運営はもとより,限られた時間の中で座談会や開催記事の編集に尽力くださった皆様に,心より感謝申し上げる.

IUPAB2024は,生きものの理を共に考える楽しさを通じて,日本生物物理学会が大切にしてきた『飄々楽学』―自由に学び,究める文化を体験できた機会であったといえよう.

 
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