Bird Research
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短報
ニホンジカの下層植生摂食の影響が宿主を通して托卵鳥へ
植田 睦之葉山 政治串田 卓弥
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2019 年 15 巻 p. S11-S16

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抄録

近年全国各地でニホンジカが増加しており,シカが下層植生を摂食することで,シカの多い森林では下層植生を利用する鳥類が減少傾向にあることが知られている.こうした鳥たちの一部はカッコウ類の宿主となっているので,シカの影響がカッコウ類の減少にも繋がっていないかについて検討した.解析に利用したのは環境省モニタリングサイト1000の2010年から2019年の調査データである.シカの影響の軽微な調査地については下層植生を利用するウグイスやムシクイ類そしてそれに托卵するツツドリやホトトギスに有意な減少は見られなかったが,シカの影響が顕著な調査地では,減少が認められた.托卵鳥にとっては,宿主は欠かすことのできない繁殖資源であり,そのため,シカの影響が宿主の減少を通してツツドリやホトトギスにも及んでいるものと考えられた.

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