2006 年 2 巻 p. A11-A17
2005/06年冬の記録的な厳しい気象条件が水鳥の越冬状況に与えた影響を明らかにするために,宮城県北部にある伊豆沼・内沼において,気象条件とガンカモ類の個体数のデータを,平年並みの寒さであった2004/05年と2005/06年で比較した.2005/06年の気象条件をみると,12月の気温の低下と積雪の増加が顕著で,11,1月は平年並みに近い状況であり,沼の凍結期間は前年の 3倍以上の長さだった.ガンカモ類の個体数変動をみると,2004/05年に対し,2005/06年ではオオハクチョウが増加,マガンが安定傾向にあり,カモ類は増加時期が早い傾向にあった.オオハクチョウの増加とカモ類の早い時期の増加は,宮城県以北の厳しい気象条件によって南下してきた個体によるものと考えられた.一方で,越冬期,ほとんどのマガンは宮城県北部に集中しており,新たに南下する群れがなかったために,マガンの個体数は安定していたと考えられる.