2024 年 20 巻 p. A55-A62
2012年から2024年にかけての4-6月の3か月間,北海道富良野,埼玉県秩父,山梨県山中湖,長野県志賀高原から配信されるライブ音を聞き取ることで,鳥類の発声行動の記録を行なった.このデータを公開するとともに,13年間の変動を取りまとめた.対象とした主要生息種のべ81種のうち,65種には有意な増減傾向はなく,ヤマガラやセンダイムシクイなどのべ11種が有意に増加し,シジュウカラなど5種が有意に減少していた.秩父では群集気温指数(community temperature index)が経年的に上昇しており,温暖な鳥類群集への変化が認められたが,その他の地域では有意な変化は認められなかった.ほかの研究でも,本州中部の秩父と同程度の標高の調査地で,ヤマガラやメジロなどのおもに照葉樹林に生息する種が増加していることが示されており,現在,本州中部の1,000m程度の標高帯で鳥類相の大きな変化が生じている可能性が考えられた.