人が多い都市部ではハシブトガラスとハシボソガラス(以下,両種をカラスとする)と人間との間に様々な軋轢が起きており,その中で最も深刻とされている問題がゴミの食い荒らしである.食い荒らし対策のために,ゴミ袋や収集容器の変更を行なっている自治体もあるが,カラスが好む環境や季節などの知見は必ずしも十分ではない.そこで本研究は,カラスがどのような場所を好み,どこで食い荒らしの被害が発生するのかを明らかにすることを目的に行なった.調査は,高知市朝倉において,森林からの距離や住宅タイプの組み合わせから4つのルートを設定した.調査対象は週2日ある可燃ゴミの日に必ず使用されているゴミステーションを選び,計122か所設定した.調査期間は2023年5月から12月にかけて,1回につき1つのルートを6時から12時まで2時間おきに3度巡回した.調査ではゴミ袋の数(以下,袋数)や収集容器のタイプ,周辺環境(住宅タイプ,森林率など)を記録した.解析では,食い荒らしの有無を応答変数,調査実施日・袋数・収集容器の別・周辺環境を説明変数とした一般化加法モデルをもちいた.各地点8-11日(合計36日)の調査を行ない,122地点のうち36地点で食い荒らしの被害が確認された.統計解析の結果,高知市朝倉では春期に食い荒らしが多くその後減少するという季節による食い荒らしの変化があり,収集容器での対策を行なっているが効果があまりみられないこと,カラスは食い荒らしを行なう際にゴミの袋の数が多い場所を好む可能性があることが示唆された.