Bird Research
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テクニカルレポート
気象レーダー ウィンドプロファイラに映る「鳥エコー」の実態と渡り研究への応用
植田 睦之島田 泰夫有澤 雄三高木 憲太郎樋口 広芳
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2008 年 4 巻 p. T9-T20

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抄録

地上から電波を発射して上空の風向,風速を観測する「ウィンドプロファイラ(WPR)は,2001年に運用がはじまったばかりの大気用レーダーである.このレーダーに鳥に起因すると考えられる信号「鳥エコー」が映ることが知られている.そこで,この「鳥エコー」が本当に鳥からのエコーなのか検証した.北海道室蘭において2005年および2006年の秋期に 6日間,夜間や早朝に通過する渡り鳥の数を「夜間の鳴き声の数」,「月面の通過数」,「早朝の目視確認数」により把握し,2007年の秋期に 5日間「船舶レーダーに映る鳥エコー数」により把握した。それらの結果とWPRの「鳥エコー」とを比較した。
WPRの「鳥エコー」の頻度は 4種類の手法で得た鳥の飛行頻度のいずれとも有意な正の相関があった.またWPRと船舶レーダーで把握することのできた「鳥エコー」の時系列そして高度方向のパターンは概ね一致していた.これらの結果は「鳥エコー」が渡り鳥からの反射であることを強く示唆している.ただし,鳥が密な群れで飛んでいた早朝はWPRの「鳥エコー」はその数を少なく評価しており,また飛翔高度は船舶レーダーによる記録よりもWPRは高く記録していた.このような欠点はあるものの,WPRの「鳥エコー」は全国31地点で冬期を除き毎日データが蓄積されている全国的な渡り鳥の状況を知るための極めて有用な情報であることがわかった.

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