〔背景〕地域包括ケアシステムにおける地域完結型の医療提供体制の構築には,中小規模病院の看護師が地域特性を理解し,保健・医療・福祉を繋ぐ役割を発揮する必要がある.役割を発揮する能力を獲得する院内教育,特に小規模病院では,教育体制の組織化,2年目看護師の新人研修後の不安と戸惑いに対する継続的な取り組みが求められるが困難なことも多い.そのため小規模病院の2年目看護師の院内教育を行う看護師の困難を明らかにする必要がある.
〔目的〕小規模病院における2年目看護師の院内教育を担う看護師が抱える病棟での育成上の困難を明らかにする.
〔方法〕病棟で2年目看護師の院内教育を担った経験のある看護師12名に対し半構造化面接を行い,質的記述的分析を行なった.
〔結果〕育成上の困難は【2年目看護師が理解し成長するような指導方法や支援の困難】,【2年目看護師の研修プログラムや評価とチーム教育の体制の未整備】,【2年目看護師が自ら学習し,思いを表出できるような教育遂行力の不足】,【2年目看護師への指導機会・時間的制約のある勤務体制】,【2年目看護師の特性である個々の成長の差や自己表現の曖昧さを捉える困難】の5カテゴリであった.
〔考察〕5カテゴリの中で,【2年目看護師の特性である個々の成長の差や自己表現の曖昧さを捉える困難】が2年目看護師の特性に関する困難であり,特性を踏まえた指導には【2年目看護師が理解し成長するような指導方法や支援の困難】,育成を促すためには【2年目看護師が自ら学習し,思いを表出できるような教育遂行力の不足】がみられ,指導方法や教育を担う看護師自身に関する困難に繋がったと考える.2年目看護師を育成する困難の全てにおいて【2年目看護師の研修プログラムや評価とチーム教育の体制の未整備】,【2年目看護師への指導機会・時間的制約のある勤務体制】が影響しており,教育体制に関する困難であると考えられる.2年目看護師の特性を十分に理解し,その特性に合わせた指導方法を十分に検討することの重要性が示唆された.
[Introduction] Building a community-based, self-contained healthcare delivery system within the integrated community care system requires nurses in small and medium-sized hospitals to understand local characteristics and play a crucial role in connecting health, medical care, and welfare services. Acquiring the skills to fulfill this role requires in-house education, particularly in small hospitals. This involves organizing the education system and continuously addressing the anxieties and confusion of second-year nurses after their initial training, which are often challenging. Therefore, it is necessary to clarify the difficulties faced by nurses conducting in-house education for second-year nurses in small hospitals.
[Objective] To identify the difficulties encountered by nurses responsible for training second-year nurses in a ward setting in small hospitals.
[Methods] This study employed a qualitative descriptive design. Data were collected through semi-structured interviews with 12 nurses who had experience providing in-hospital education for second-year nurses in hospital wards.
[Results] The analysis identified the following five categories of difficulties: (1) difficulties in instructing and supporting second-year nurses to understand their work and to grow; (2) inadequacy of training programs for second-year nurses, evaluation of their performance, and team training systems; (3) lack of ability to execute educational programs that encourage second-year nurses to educate themselves and to express their thoughts; (4) a working shift system that limits opportunities and time to instruct second-year nurses; and (5) difficulties in understanding differences in individual growth and ambiguity of self-expression, which are characteristics of second-year nurses.
[Discussion] This study identified difficulties associated with the characteristics of second-year nurses, difficulties associated with the nurses in charge of their training and education, and difficulties associated with education systems. It is important to understand the characteristics of second-year nurses in small hospitals and to fully consider training methods adjusted to these characteristics.
厚生労働省は高齢化が進む日本において,住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を目指している[1].これを受けて日本看護協会は地域の人々が「疾患や障害があっても,生活の質を維持し,地域で自分らしい暮らしを続ける」という新たな価値観を共有し,看護職は仲間づくり,まちづくりへの支援を行うとしている[2].地域包括ケアシステムでは地域完結型の医療提供体制の構築が求められ,中小規模病院の看護職には地域の特性を理解した上で,生活と保健・医療・福祉をつなぐ役割が求められている.また,看護職がこのような役割を発揮するための能力を獲得するためには,人材育成の体制を整備し,支援していくことが肝要になってくる[3].中小規模病院を対象とした日本看護協会の実態調査では能力を獲得するための教育として,新人看護職員に留まらず全ての段階における看護職の能力開発を目指した教育の充実に課題があること,加えて,担当者が新人看護職に十分な教育を行う役割を果たせていないこと,実践と集合研修を結びつけて指導する能力に関する課題があることも示された[4].特に99床以下の病院では指導者の育成に課題がある割合が50%を超えている[5].小規模病院になるにつれて院内に講師を担うような人材がいないこと,院内の教育体制としての組織化ができていないことが明らかとなっている.
看護師の経年別研修に関して中小規模病院における卒後2年目の院内教育実施状況は,新人教育に比べて半減している[6]と報告されている.中小規模病院の卒後2年目以降の教育では院内看護職員教育システム・プログラムに関する課題があることも明確になった[7].また,看護師は1年目の新人研修後,3年目になるとほとんどの看護師がクリニカルラダーに組み込まれているプリセプター研修の受講となり,その狭間で2年目は不安と戸惑いがあるともされている[8].2年目看護師はクリニカルラダーレベルIIに相当するとされ[9],レベルIIは「標準的な看護計画に基づき自立して看護を実践する」と定義される[10].この点から自立性を養うことの必要性が伺えるが,クリニカルラダーレベルIIに相当する看護師の幅は広く,2年目から5年目の看護師が混在している[9].このことから教育が必要な2年目看護師と中堅看護師が画一の教育体制のままで良いのかといった疑問がある.新人看護職員研修ガイドライン改訂版[11]では新人看護師の臨床実践能力の到達目標は1年以内を目指すが,状況によっては2年目以降に設定しなければならないとしている.また,小規模病院では到達目標に記載されている項目の全てを体験することは難しく,外部研修を取り入れることも勧められている.このため小規模病院においては臨床実践能力を高めるために,継続して2年目看護師の教育に努めていくことが必要であることが示唆される.
以上のことから地域包括ケアシステムを担う病院においては病院規模が小さくなるにつれて2年目看護師への教育システムやプログラムの構築に課題があることがわかった.しかし,院内教育における病棟での2年目看護師の教育を担う看護師が,具体的にどのような育成上の困難を抱えているのかは明確になっておらず,研究に取り組む必要性がある.小規模病院における2年目看護師の院内教育を担う看護師が抱える病棟での育成上の困難を明らかにすることで,2年目看護師の特性を捉えた育成のあり方や,2年目看護師の育成のために必要となる教育的な能力を見出す一助となることが期待される.
本研究の目的は,小規模病院における2年目看護師の院内教育を担う看護師が抱える病棟での育成上の困難を明らかにすることである.小規模病院における2年目看護師の院内教育を担う看護師が抱える病棟での育成上の困難を明らかにすることで,2年目看護師の特性を捉えた育成のあり方や2年目看護師の育成のために必要となる教育的能力を見出す一助となることが期待される.
先行研究では,小規模病院における2年目看護師の育成上の困難について明らかとなっておらず,質的記述的に研究に取り組む必要を考えた.質的記述的研究とは「現象をありのままを描写すること[12]」である.本研究においては,研究参加者それぞれが2年目看護師の育成上の困難をどのように感じ,経験したかをありのまま記述することで,2年目看護師の育成のあり方や2年目看護師の育成のために必要となる教育的能力を見出すことができると考え,半構造化面接による質的記述的研究を行なった.
2. 用語の操作的定義 2.1 小規模病院2病棟以上の看護単位を有し,許可病床が「60~150床」前後の一般病院とした.厚生労働省[13]は小病院を「20~99床」と定義している.また,愛知県看護協会[5]は中小規模病院を「200床未満」としていることから100床前後を小規模病院と考えた.しかし,愛知県看護協会の調査では99床以下の病院では組織的な教育体制が構築されているのは半数にとどまっていることが報告されている.このことから,より院内教育の組織が構築されている可能性がある病床数として「99床」から,上限を「150床」まで拡大した.下限については同様に愛知県看護協会[5]の報告から「20~49床」規模の病院では組織的な教育委員会がない割合が72.7%もあり,教育の体制自体が整備されていない可能性がある.このことから1病棟単位を「30~50床」とし,2病棟以上で組織的な院内教育の体制がある病院と考え,下限を「60床」とした.
2.2 育成病棟における2年目看護師の目標に向かい,将来的に独り立ちできるように指導することとした.
2.3 困難組織の理念を反映した院内教育をもとに,病棟における2年目看護師の育成上,難しいと感じることや行動を行う際に支障となることとした.
2.4 2年目看護師看護師免許を取得後に初めて就職した病院で2年目を迎えた看護師とした.
研究参加者
研究は,A県を中心とした150 km圏内にある近隣県の小規模病院に該当するすべての86施設へ研究協力を依頼した.このうち返答のあった7病院に所属する,これまでに病棟で2年目看護師の院内教育として日々の実践を主に担当した経験のある看護師とした.役職や教育担当者,研修責任者の役割の有無については小規模病院では人材不足から役職や役割を兼務している可能性を考え,条件に問わないこととした.また,除外基準として日々単発的にその日の2年目看護師の指導だけをしている看護師とした.
3. データ収集方法研究協力病院の看護部管理責任者に,書面と口頭で研究の主旨を説明し,研究参加人数分の研究依頼書,研究の同意書の配布を依頼した.返信のあった研究参加者に希望する方法で連絡を取り,インタビュー前に再度研究参加についての説明を行い,研究内容に同意を得られた者を研究参加者とした.
データ収集はインタビューガイドを用いた半構造化面接法とし,研究参加者の希望があった場合にはオンラインでのインタビューを行った.インタビューは研究の説明を含めて約60分程度の個人面接とした.インタビューでは小規模病院での教育体制や病棟における2年目看護師の育成における困難などを聴取した.その際,研究参加者の承諾を得たうえで,インタビュー内容をICレコーダに録音した.
4. 分析方法インタビューの録音データから逐語録を作成後精読し,小規模病院における2年目看護師の院内教育を担う看護師が抱える病棟での育成上の困難について述べられた内容に焦点を絞りコード化した.作成したコードを比較・統合し,類似性のあるコードをまとめ,その内容を包含するサブカテゴリを抽出した.サブカテゴリも同様に類似性のあるサブカテゴリをまとめ,その内容を包含するカテゴリを抽出した.カテゴリからコードへ戻りつつ分析を丁寧に進めていった.信頼性と妥当性を確保するために,分析の信頼性を確保するためにコード化,サブカテゴリ化,カテゴリ化に至るまで全ての段階で質的研究の研究者3名からスーパーバイズを受けた.分析結果について内容の一致が図れるまで研究者間で十分な検討を繰り返し行い,合意形成を図った.
5. 倫理的配慮研究参加者には本研究の目的,意義,調査方法,研究への参加は自由意思であること,不同意による不利益がないこと,同意後の撤回の権利,学会発表・学会誌への投稿について書面と口頭で説明し同意を得た.また,小規模病院においては看護部管理責任者と研究参加者が互いに顔のわかる関係であることが予測されるため,研究参加者には看護部管理責任者からの紹介による強制力が働かないよう,研究参加の有無について看護部管理責任者へ伝えないことを保証した.なお,本研究は,聖泉大学人を対象とする研究倫理委員会の倫理審査の承認を得て実施した(承認番号023-003,承認2023年6月16日).
研究参加者は12名(女性11名,男性1名),年齢は47.2 ± 7.8歳,所属施設の病棟数は2.3 ± 0.6病棟であった.看護師経験年数は22.6 ± 9.1年であり,小規模病院勤務年数が11.3 ± 10.2年,小規模病院での2年目看護師教育年数は3.1 ± 1.8年であった.インタビュー時間は1人あたり47.0 ± 9.4分であった(表1).
| 参加者 | 年齢 (歳代) |
性別 | 病棟数 (病棟) |
クリニカル ラダー 導入歴(年) |
職位 | 看護師勤務年数(年) | 小規模 病院 (年) |
2年目 看護師教育 (年) |
2年目 看護師教育 時期 |
教育に関する 研修参加の 有無 |
研修名 | 面接時間(分) | 面接方法 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 20歳代 | 男性 | 2 | 5 | なし | 4 | 4 | 3 | 現在 | あり | プリセプター研修 | 33.6 | オンライン |
| B | 50歳代 | 女性 | 2 | 3 | 主任 | 21 | 8 | 5 | 5年前 | あり | 実地指導者研修 | 50.4 | オンライン |
| C | 30歳代 | 女性 | 2 | 5 | なし | 4 | 4 | 1 | 現在 | あり | プリセプター研修 | 61.1 | 対面 |
| D | 50歳代 | 女性 | 2 | 0 | 主任 | 22 | 2 | 2 | 現在 | あり | 新人研修 | 65.5 | 対面 |
| E | 40歳代 | 女性 | 2 | 3 | なし | 26 | 26 | 5 | 2年前 | あり | 実習指導者 | 49.0 | オンライン |
| F | 40歳代 | 女性 | 2 | 0 | 主任 | 24 | 5 | 6 | 現在 | あり | プリセプター研修 | 48.4 | オンライン |
| G | 50歳代 | 女性 | 2 | 3 | 主任 | 34 | 34 | 1 | 現在 | あり | ファーストレベル | 36.2 | オンライン |
| H | 40歳代 | 女性 | 3 | 5 | 主査 | 26 | 21 | 2 | 1年前 | あり | 新人看護職員研修 教育担当者研修 |
35.1 | オンライン |
| I | 50歳代 | 女性 | 2 | 5 | 副師長 | 30 | 5 | 4 | 3年前 | あり | 新人看護職員研修 教育担当者研修 |
40.5 | 対面 |
| J | 50歳代 | 女性 | 4 | 5 | 主任 | 22 | 17 | 5 | 1年前 | あり | 特定行為研修 | 42.4 | 対面 |
| K | 40歳代 | 女性 | 2 | 5 | なし | 28 | 8 | 2 | 1年前 | あり | 新人看護職員研修 教育担当者研修 |
47.1 | 対面 |
| L | 50歳代 | 女性 | 2 | 5 | 師長 | 30 | 1 | 1 | 現在 | あり | 指導者講習 | 52.0 | 対面 |
| 平均 標準 偏差 |
47 ± 7.8 | 2.3 ± 0.6 | 3.7 ± 1.8 | 22.6 ± 9.1 | 11.3 ± 10.2 | 3.1 ± 1.8 | 47.0 ± 9.4 |
小規模病院における2年目看護師の院内教育を担う看護師が抱える病棟での育成上の困難は,219コード,24サブカテゴリ,5カテゴリから構成された(表2).
| カテゴリ | サブカテゴリ | コード数 |
|---|---|---|
| 2年目看護師が指導内容を理解し成長を促すような方法や支援の困難 | 2年目看護師に未経験なことや不慣れなこと,苦手なことを指導することが難しい | 9 |
| 追い詰められた状況になった2年目看護師の精神的なサポート方法に悩む | 6 | |
| 2年目看護師が患者に興味を持ち,必要な知識やアセスメント力がつくように指導することが難しい | 7 | |
| 2年目看護師の特徴や不安の軽減,自信につながるように親密に関わり,支援することが難しい | 11 | |
| 2年目看護師の興味や適性,成人期の発達課題,個性に合わせた目標へ導くことが難しい | 11 | |
| 2年目看護師と先輩看護師などとの人間関係の調整をすることが難しい | 9 | |
| 2年目看護師に理解できるような言葉の選択や伝え方が難しい | 11 | |
| 適切な場面やタイミングでの指導が行えていない | 9 | |
| 2年目看護師の研修プログラムや評価を行うチーム教育体制の未整備 | 自施設や2年目看護師の特性に合う教育体制や研修がない | 15 |
| 2年目看護師を評価する基準や方法が明確になっていない | 11 | |
| 2年目看護師に合わせた課題や教育体制,目標設定に悩む | 3 | |
| 2年目看護師へのチームで支援する環境が整えられていない | 12 | |
| 2年目看護師の教育をチームで協働して行うことが難しい | 11 | |
| 指導看護師がプリセプター終了後の2年目看護師を一人前として捉え,フォローができていない | 5 | |
| 2年目看護師が自ら学習し,思いを表出できるような教育を担う看護師の教育遂行力の不足 | 先輩看護師の経験や教育能力,指導方法に違いがあり2年目看護師を戸惑わせてしまう | 9 |
| 指導看護師に教育の知識や経験,教育遂行能力が不足している | 22 | |
| 2年目看護師が自ら学習し,考えるように発問する力や関わる力が不十分 | 7 | |
| 2年目看護師の思いを全て表出させる力が不十分 | 5 | |
| 2年目看護師に指導内容が響かず変化がみられない | 7 | |
| 2年目看護師への指導機会・時間的制約のある勤務体制 | 指導看護師が多忙で余裕がなく,十分な指導時間が取れない | 18 |
| 交代勤務により2年目看護師との勤務時差があり,指導できる機会がもてない | 6 | |
| 教育を担う看護師が2年目看護師の特性である個々の成長の差や自己表現の曖昧さを捉える困難 | 2年目看護師は他者とコミュニケーションが取れない | 4 |
| 2年目看護師の反応が曖昧で理解できたかがわからない | 4 | |
| 2年目看護師は先輩看護師の影響を受けやすく,個々の成長に差がある | 7 |
以下,【 】内は各カテゴリ名を,〔 〕内はサブカテゴリを,「斜字」は実際の研究参加者の語りを示す.
2.1 【2年目看護師が指導内容を理解し成長を促すような方法や支援の困難】このカテゴリは,2年目看護師が感じる不安軽減への精神的なサポート,看護ケアを通したアセスメント力向上での自信獲得への支援,それぞれの興味や適性にあった目標の設定,ジェネレーションギャップのある先輩看護師との人間関係の調整を,適切なタイミングで伝え指導を行うことの困難を示した.教育を担う看護師はシミュレーション指導をしていても急変対応など〔2年目看護師に未経験なことや不慣れなこと,苦手なことを指導することが難しい〕とし,また2年目看護師が急変対応にあたった際には「すごいしんどいってなって,ぎりぎりまで追い詰められた状態ぐらいになって,やっぱり私しんどいです,(中略)どうサポートしてあげたら納得してくれるのか」という〔追い詰められた状況になった2年目看護師の精神的なサポート方法に悩む〕という困難を認識していた.教育を担う看護師は業務ができれば良いと思っている2年目看護師に対して看護ケアを通して〔2年目看護師が患者に興味を持ち,必要な知識やアセスメント力がつくように指導することが難しい〕という患者への関心や知識が向上を目指す指導方法に困難を感じていた.また,2年目看護師が多重課題の達成や独り立ちできるよう支援することが難しく〔2年目看護師の特徴や不安の軽減,自信につながるように親密に関わり,支援することが難しい〕という困難を認識していた.教育を担う看護師は2年目看護師の指導を行う上で2年目看護師の成長にどこまで期待してよいのかと〔2年目看護師の興味や適性,成人期の発達課題,個性に合わせた目標へ導くことが難しい〕という困難を認識していた.さらに,2年目看護師とは上下関係が生じたり仕事や生活においても先輩看護師との間にジェネレーションギャップがあったりなど〔2年目看護師と先輩看護師などとの人間関係の調整をすることが難しい〕と感じており,2年目看護師の考えを尊重したコミュニケーションをとろうとしても「自分の考えを持っている子たちが増えてきてるから,そこも大切にしてあげないと,コミュニケーションとか取る中では,結構難しいなあと思う」のように〔2年目看護師に理解できるような言葉の選択や伝え方が難しい〕という2年目看護師の指導を行う場面での伝え方に困難を認識していた.さらには指導を行う場面においても,教育を担う看護師が2年目看護師の看護技術の進捗を直接見て確認する機会が持てず明確な指導ができないといった〔適切な場面やタイミングでの指導が行えていない〕ことも困難として認識していた.
2.2 【2年目看護師の研修プログラムや評価を行うチーム教育体制の未整備】このカテゴリは,小規模病院では2年目看護師の研修体制や評価基準が不明確で目標設定が難しく,チームで協働し支援する環境も整っていない中での困難を示した.
教育の場面では「自分の施設に合うような,ガイドラインがない」や「2年目だけを対象にした研修っていうのはない」という〔自施設や2年目看護師の特性に合う教育体制や研修がない〕ことを困難と認識していた.2年目看護師の評価に関しても上司の判断で左右され「目標値みたいなものが数値であるわけではないので.そんなのが評価ツールみたいにあれば助かるんですけど,そこはないので.だからそこが非常に難しい」という〔2年目看護師を評価する基準や方法が明確になっていない〕ことを困難と捉えていた.また,教育体制や評価がないために「まだ1年目の段階かなっていうような子たちが,こう増えてきてるような感じがして.一年かけてラダーIっていうのをやってたのが,ほんまにそれでいいのかな」という〔2年目看護師に合わせた課題や教育体制,目標設定に悩む〕といった2年目看護師を教育するための体制づくりに困難を認識していた.2年目看護師への教育における人的環境については「指導していただいているスタッフの人数が足りない」など〔2年目看護師へのチームで支援する環境が整えられていない〕,「自分だけじゃなくて,病棟,チーム全体で行かないと2年目の子の指導にならないです」と〔2年目看護師の教育をチームで協働して行うことが難しい〕といったチーム支援における困難を認識していた.さらには,「1スタッフとして,あなたも,これからは教えないといけない的な.だから2年目さんへのフォローってはなかなかできてないかもしれないかもしれません」と語り,〔指導看護師がプリセプター終了後の2年目看護師を一人前として捉え,フォローができていない〕といった2年目看護師への支援方法の困難についてのデータが得られた.
2.3 【2年目看護師が自ら学習し,思いを表出できるような教育を担う看護師の教育遂行力の不足】このカテゴリは,指導する側の教え方に違いがあることや2年目看護師の個別性に合わせた教育を学んでも自分で考える力がつくような発問が難しいことやコミュニケーションを通して2年目看護師の困り事が引き出せずにいるなど教育遂行力の不足に関する困難を示した.
教育を担う看護師は,「(先輩看護師の)経験年数も違いますし,教える能力も,その先輩によって違う」など〔先輩看護師の経験や教育能力,指導方法に違いがあり2年目看護師を戸惑わせてしまう〕といった差が,2年目看護師の指導に影響していることも困難と捉えていた.そして「自分自身その自信がない状態での教育だったので,かなりその教え方とか声のかけ方とかはすごくもう教育全般困りました」や「個別性を持った対応をしてと,私たちも教育を受けるじゃないですか,でも自分たちにそれだけの引き出しがないのか,お手上げです」といった特に類似した主なコード数が多い〔指導看護師に教育の知識や経験,教育遂行能力が不足している〕という教育を担う看護師自身が育成上に必要な知識や能力などに困難を認識していた.加えて,指導の場面では「教えるばかりじゃなくて,質問するっていう形で,その子が自分で考える,物事を考える力つくような質問とか指導しないといけない」と〔2年目看護師が自ら学習し,考えるように発問する力や関わる力が不十分〕や「具体的にどこが気になってとか(中略),聞き出す力も私にはない」と〔2年目看護師の思いを全て表出させる力が不十分〕といった2年目看護師を導いていくために必要な力にも不足を感じていた.そして,教育の知識や発問する力の不足を感じると同時に「必死に伝えようとしている物事を(2年目が)吸収していないことを難しい」と感じ,〔2年目看護師に指導内容が響かず変化がみられない〕といった2年目看護師に変化をもたらす指導ができない困難を認識していた.
2.4 【2年目看護師への指導機会・時間的制約のある勤務体制】このカテゴリは,教育を担う看護師が仕事に追われ,2年目看護師教育に注げる時間がないことや教育を担う看護師自身も交代勤務を行なっており2年目看護師と勤務時差が生じることで指導機会がとれていない困難を示した.
教育を担う看護師は「小さい病院なので,スタッフがギリギリなところがあるので2年目とかの指導するのに,指導する側の調整というか,自分もたくさん業務を抱えたり,委員会とかが始まってるのに,やっぱりそこの指導もっていうふうに,重複することがいっぱいあって,やっぱり指導していると,時間業務内に仕事が終わらない」という〔指導看護師が多忙で余裕がなく,十分な指導時間が取れない〕現状の困難を認識していた.また,「2年目も夜勤に入って,私も会えない時もあったりとかもあったし,そこらへんでやっぱちょっと指導することが減っていたり」と〔交代勤務により2年目看護師との勤務時差があり,指導できる機会がもてない〕という時間的な制約も困難と捉えていた.
2.5 【教育を担う看護師が2年目看護師の特性である個々の成長の差や自己表現の曖昧さを捉える困難】このカテゴリは,1年目の成長の差が2年目看護師の教育に影響していることや2年目看護師世代はコミュニケーションが苦手であり,指導したことに対する変化が見られずどのように理解しているのかわからないといった困難を示した.
教育を担う看護師は2年目看護師の教育を行う上で〔2年目看護師は他者とコミュニケーションが取れない〕ことや「言葉もそうですし.あーっていう感じではあるんですけど,あーではわかったのか,わかってないのかがわからないんですよね.あーって言われても,なのでわかったのって確認をすると,ちょっと強い感じになるので,わかったのとは言えないなと思って.また確認しておいてくださいねって言うんですけど.それでもあーっていう感じなんです」の〔2年目看護師の反応が曖昧で理解できたかがわからない〕といった2年目看護師の反応に対する困難を認識していた.そして,「その子のこう感性もあると思う」と〔2年目看護師は先輩看護師の影響を受けやすく,個々の成長に差がある〕といった2年目看護師の個々の特性に対する困難を認識していた.

本研究では,小規模病院における2年目看護師の院内教育を担う看護師が抱える病棟での育成上の困難として5カテゴリが分類された.育成において2年目看護師を理解する取り組みの中で【教育を担う看護師が2年目看護師の特性である個々の成長の差や自己表現の曖昧さを捉える困難】を認識していた.このカテゴリは2年目看護師の特性に関する困難であり,その特性を踏まえた指導を行う際には【2年目看護師が指導内容を理解し成長を促すような方法や支援の困難】がみられた.また,育成を促すために【2年目看護師が自ら学習し,思いを表出できるような教育を担う看護師の教育遂行力の不足】を認識し,自らの教育に関する知識や経験,能力について困難を自覚していた.これらの2つのカテゴリは指導方法や教育を担う看護師自身に関する困難であることが伺える.そして育成する上で全ての段階において小規模病院特有である【2年目看護師の研修プログラムや評価を行うチーム教育体制の未整備】,【2年目看護師への指導機会・時間的制約のある勤務体制】が2年目看護師の特性に関する困難,指導方法や教育を担う看護師自身に関する困難に影響しており,この2つのカテゴリは教育体制に関する困難であると考えられる.カテゴリの関連に従い,2年目看護師の特性に関する困難,指導方法や教育を担う看護師自身に関する困難,教育体制に関する困難の3様相について考察する.
2. 2年目看護師の特性に関する困難2年目看護師の特性に関する困難では,育成する上で【教育を担う看護師が2年目看護師の特性である個々の成長の差や自己表現の曖昧さを捉える困難】を認識していた.2年目看護師はすでに1年間の臨床経験を有している.その1年間で生じた個々の成長の差が育成上の困難であった.小規模病院では研修を受ける機会がなかった[14]ことによる育成における新人教育の経験や機会が差を生じさせている.それが2年目看護師の1年間の成長に影響が及んでいたと考えられる.朝日奈らは2年目の初期には患者の急変への対応や患者の訴えへの対応に反省的実践がある[15]ことを報告した.また,卒後2年目看護師の育成上の問題に,新人看護師の時に経験や修得できなかった臨床実践能力を継続して修得できるための教育体制が不十分であることがわかっている[16].小規模病院では大規模病院とは違い,2年目を看護スタッフの一人として捉えているという語りも得られている.一方で,新人レベル看護師は多重課題の経験を通したセルフモニタリングの反復によって,患者の全身状態や治療の状況に応じたアセスメントと優先順位の判断に確信が持てるようになり,スムーズな多重課題の遂行につながった[17]とも報告されている.このように,1年目の成長に差があることで,教育を担う看護師が本来求めていた2年目看護師の役割とは異なり,1年目の教育を継続しなければならない負担や2年目看護師個々の成長で育成の方法が異なることの困難につながったと考える.
また,2年目の時期における個々の成長の差がある場合では,2年目の到達目標を達成する時期に差が生じることで困難を認識していた.木田ら[18]の調査では99床以下の小規模病院では新人看護職員採用人数が2.54人 ± 1.81,新人看護職員の離職率は10.5%[19]と非常に高く,小規模病院として同時期に入職した看護師が少ない環境にあることがわかる.鈴木は中規模病院の教育の困難として新人看護職員が一人の場合に,教育の実施に負担がある[20]ことを報告した.本研究においても2年目看護師の同時期に入職した看護師が少人数である語りがあった.そのため,小規模病院の特徴である少人数の2年目看護師の置かれた環境では,2年目における個々の成長の差を鑑みて,誰に合わせた育成をすれば,2年目看護師の成長の差による否定的な感情を与えず育成が行えるのかといった困難が生じたと考えられる.
そして,〔2年目看護師は他者とコミュニケーションが取れない〕や〔2年目看護師の反応が曖昧で理解できたかわからない〕という特性からも困難を認識していた.2年目看護師はコロナ世代である.新型コロナウイルス感染症による隔離や実習不足がそれらを加速させた.コロナ禍での新人看護師は患者とコミュニケーションが円滑に取れない,職員同士のコミュニケーションが不足しており[21],2年目看護師においても継続的な指導が必要となり困難につながったと考える.また,2年目看護師はZ世代でもある.Z世代は自分が気に入ったSNSの中の世界観だけが正解に思え,違う価値観を受け入れづらいという特徴がある[22].一方で本研究の研究参加者の平均年齢は47.2 ± 7.8歳であり,X世代である.X世代の特徴はスパルタ教育・厳しい指導を耐え抜いてきた世代である[23].Z世代である2年目看護師の教育を担うX世代の看護師はまさに正反対の特徴を有し,その乖離が2年目看護師の特性を困難と捉えた要因になっていたと考える.大規模病院では教育を担う看護師が2年目看護師と同世代であることが多く,この世代の差による困難は小規模病院の教育を担う看護師の特徴的な背景と考える.
このように同時期に入職した看護師が少ないことで生じる困難や世代の差による困難については小規模病院特有の新たな知見と言える.
2年目看護師の特性に関する困難については,【教育を担う看護師が2年目看護師の特性である個々の成長の差や自己表現の曖昧さを捉える困難】に気づくことによって生じた困難の様相と考える.
3. 指導方法や教育を担う看護師自身に関する困難指導方法や教育を担う看護師自身に関する困難では,教育を担う看護師は実際に2年目看護師へ教育として関わる中で【2年目看護師が指導内容を理解し成長を促すような方法や支援の困難】,【2年目看護師が自ら学習し,思いを表出できるような教育を担う看護師の教育遂行力の不足】に困難を感じていた.
2年目看護師の特性があることを前提に,教育を担う看護師は指導の場面で〔2年目看護師の興味や適正,成人期の発達課題,個性に合わせた目標へ導くことが難しい〕と認識していた.Z世代の価値観は「世界と競争して勝ち抜く」と「努力が報われるとは限らない.自分の周りを心地よく整えて過ごせばそれでいい」の二極化している[22].反対にX世代の価値観は受験競争など競争社会を生き抜いた精神論が背景にある[23].前述の通り,小規模病院の教育を担う看護師と2年目看護師との世代の差は,Z世代である2年目看護師の価値観とX世代である教育を担う看護師の価値観の乖離を生じさせ,導いていこうとしても2年目看護師に響かない現状が困難を誘発していたと考える.
また,〔適切な場面やタイミングでの指導が行えていない〕困難が生じていた.2年目看護師の当初は不確かなままケアをしている怖さを抱いている[24].2年目看護師はこの不安に対する支援として,ロールモデルになる先輩看護師の存在,情緒的支援となる看護師長の存在,教育・サポート体制が充実している組織風土,理解者となる同期看護師・家族の存在などを望んでいる[25].小規模病院では先輩の多忙さや教育体制の未整備,同時期に入職した看護師の少なさからこの支援が行えていない背景があり,そのため適切なタイミングで指導が行えていない困難が抽出されたのではないかと考える.
教育を担う看護師は〔2年目看護師に未経験なことや不慣れなこと,苦手なことを指導することが難しい〕や〔2年目看護師が患者に興味を持ち,必要な知識やアセスメント力がつくように指導することが難しい〕の看護ケアや対応について2年目看護師に指導することに困難を認識していた.これらの項目は職場内教育の中で生じたものと考えられる.岩本ら[26]は2年目看護師自身と先輩看護師が認識している2年目看護師の到達目標は,共通して対象ニーズを捉えることにあるが,その内容が2年目看護師は技術の向上で,先輩看護師は看護の質や個別性を深めること,と異なっていることを明らかにした.教育を担う看護師は2年目看護師に看護実践を通して患者の個別性の理解を期待していることがわかる.そのため,小規模病院においても到達目標が共通していても達成のために必要とする患者認識の方法が異なる場合には,2年目看護師の指導において困難につながったと考えられる.
〔2年目看護師の特徴や不安の軽減,自信につながるように親密に関わり,支援することが難しい〕や〔追い詰められた状況になった2年目看護師の精神的なサポート方法に悩む〕,〔2年目看護師と先輩看護師などとの人間関係の調整をすることが難しい〕では,教育を担う看護師が2年目看護師に「どのように関わり,サポートすれば良いのか」から抽出された.鈴木ら[27]は卒後2年目看護師のリアリティショックには先輩看護師の支援不足,精神的負担,身体的負担,死にゆく患者の処置,一人当たりの業務量の負荷,モチベーション低下があることを報告した.これらから2年目看護師が感じているリアリティショックと教育を担う看護師が認識している困難は互いの立場からみた教育のあり方の難しさを示していることが伺える.2年目看護師自身も支援とサポートを期待し,教育を担う看護師もそれに取り組んでいるが思うような結果が得られていない.一つはZ世代である2年目看護師の特性を捉えることができていないことが支援する上で困難になり,一つは中規模病院の院内教育の現状と困難は人材不足と深く関連している[20]ことである.教育責任者としての役割行動を高めるためには,教育責任者のモチベーションを大切にしながら,周囲と協働でき,学習できる環境や仕組みを整備する必要がある[28].しかし,小規模病院においては,一人で部署における教育を担当している[29]ことによるマンパワー不足が,サポートができていない困難に結びつき,教育を担う看護師としての役割行動へのモチベーションに影響をきたしていると考える.
そして,教育を担う看護師は〔指導看護師に教育の知識や経験,教育遂行力が不足している〕ことにより〔2年目看護師が自ら学習し,考えるように発問する力や関わる力が不十分〕や〔2年目看護師の思いを全て表出させる力が不十分〕と言え,そのために〔2年目看護師に指導内容が響かず変化がみられない〕という結果が得られた.研究参加者は研修を受けていても教育に関する能力の不足を自覚していることが明らかとなった.大規模病院では成人学習理論に則って教育指導者の育成を行なっており[30],指導者の育成において院内教育体制が整備されている.これに反して小規模病院では指導者育成のため組織化が図れていない現状が,教育を行う上で能力差となって現れているのではないかと推察する.教育に関する院外研修は1日から数日がほとんどである.稲垣ら[31]は臨床経験や新人教育に携わる経験が少ない実地指導者にとっては,自分に期待されていることはわかってもそれを具体的にイメージ化することが難しいとしている.短期間の研修では学びを深め,2年目看護師への教育について理解し,実践に結びつけることは非常に難しいと考えられる.また,2年目看護師の特性でも論じた通り,多種多様なZ世代を理解することにおいても複雑化しており,その特性に合わせて指導する能力を備えることは簡単ではないと考える.鈴木[20]は中規模病院の教育責任者も知識不足で試行錯誤する教育活動という困難があることを明らかにした.また,日本看護協会の中小規模病院の調査でも教育の担当者が院内外の研修を受講しても具体的な実践内容がわからず十分役割を果たすことができないこと[4]が明らかとなった.大規模病院の教育指導者を育成する体制と異なり,小規模病院では教育を担う看護師が役割として教育に携わっていても教育に関する知識不足や教育活動を試行錯誤していることが伺え,困難につながったと考える.
このように,先行研究では教育体制全般の未構築について明らかとなっていたが,小規模病院における指導者育成のための組織化ができていないことは小規模病院の新たな知見と言える.
指導方法や教育を担う看護師自身に関する困難について,2年目看護師を実際に指導していく中で【2年目看護師が指導内容を理解し成長を促すような方法や支援の困難】と【2年目看護師が自ら学習し,思いを表出できるような教育を担う看護師の教育遂行力の不足】の2カテゴリが互いに関係しながら,2年目看護師の特性を理解していこうとする上で生じた困難の様相と考える.
4. 教育体制に関する困難教育体制に関する困難では,【2年目看護師への指導機会・時間的制約のある勤務体制】や【2年目看護師の研修プログラムや評価を行うチーム教育体制の未構築】は2年目看護師の育成において全ての段階に影響がある困難として認識された.
〔交代勤務により2年目看護師との勤務時差があり,指導できる機会がもてない〕困難が明らかとなっている.小規模病院でも2年目看護師のみの教育の担当者や精神的な支援者の存在の必要性が伺える.しかし,教育体制を整備するにも勤務状況により,その役が機能していないことが明らかとなっている.これは頼れる役割の看護師の必要性を認識しながらも,現実として頼れる役割の看護師自身も臨床においては看護スタッフ一人としての役割があり,教育だけに携われていない人材不足からの影響が生じていると考える.これは勤務状況だけではなく,〔指導看護師が多忙で余裕がなく,十分な指導時間が取れない〕ことの困難にも共通する.小森らの研究でも中規模病院においては深刻化する人員不足から人材確保することの難しさ[33]が明らかとなった.日本看護協会の中小規模病院の調査においても教育の責任を担う者を配置しているが約80%いる一方,兼任で配置がそのうちの約80%であり,教育に専従している看護師は9%に満たない結果[4]であった.このため,小規模病院の看護師は一つの役割だけではなく,複数の役割や委員を掛け持ちしていることがわかる.これが多忙になる一因であり,2年目看護師へ教育のための時間や機会が持てない原因につながっていると考えられる.
そして〔自施設や2年目看護師の特性に合う教育体制や研修がない〕だけではなく〔2年目看護師を評価する基準や方法が明確になっていない〕困難が明らかとなった.そのために〔2年目看護師に合わせた課題や教育体制,目標設定に悩む〕困難が現れたと考えられる.これらの結果は前述の文献等で述べた看護協会の調査にある院内教育の体制の未構築[4, 5]と一致する.また小森らの教育体制の不備に気づく[32]や山本他の院内看護職員教育システム・プログラムの未構築[7]からも同様の結果が見られた.先に述べた通り小規模病院では院内教育に充てる人材がいないことや教育の担当者が院内外の研修を受講しても具体的な実践内容がわからず役割を果たすことができない[4]現状があり,小規模病院の看護職の能力開発のためには,病院規模での組織的で建設的な介入が望まれる.そのためには,〔プリセプター終了後に2年目看護師を一人前として捉え,フォローができてない〕ことや〔2年目看護師へのチームで支援する環境が整えられていない〕の困難をチームで協働し,育成に取り組むことで乗り越えていかなければならないと考える.プリセプター制度からチーム支援型への移行は多くの先行研究にも示されている.また新人看護職員研修のガイドライン改訂版[11]にも全職員が新人看護職員に関心を持ち,皆で育てるという組織文化の醸成が重要である理念が示された.このようにプリセプターやチーム支援の対象は新人看護職員である.2年目看護師に対する支援については,大規模病院では2年目看護師に対しても担当の指導者をつける[33]や2年目看護師を対象とした研修[34]を用いて育成を図っている.小規模病院では人材不足や教育体制の未整備からも現時点では難しいことがわかり,チームで支援する環境が整えられていないことが現状での困難であると考える.
教育体制に関する困難については,2年目看護師を育成していく上で【2年目看護師への指導機会・時間的制約のある勤務体制】をどのように調整し,【2年目看護師の研修プログラムや評価を行うチーム教育体制の未構築】をどのように整えていけば良いのかから生じた困難の様相と考える.しかし,明らかとなった困難には小規模病院ならではとなる乗り越え方のヒントが隠されていると考える.小規模病院では職員が少ないからこそ,一人一人の顔が見え,声が伝わりやすく,現場で起こっていることを敏感に察知でき,柔軟に対応できる.そして看護部長,看護師長はスタッフの身近にいる[35].一人一人の距離の近さは2年目看護師の特性を理解することに役立つ.顔の見える看護管理職との関係性は勤務の調整,チームや組織で育成する上での柔軟性にもつながり,大きな後押しになる.このことから,小規模病院の人と人との関係性の近さを有効に活用するようなチーム支援を構築していくことの必要性が示唆されたのではないかと考える.
小規模病院における2年目看護師の院内教育を担う看護師が抱える病棟での育成上の困難として5カテゴリが抽出された.
【教育を担う看護師が2年目看護師の特性である個々の成長の差や自己表現の曖昧さを捉える困難】には小規模病院特有の同時期に入職した看護師の少なさやZ世代という特性の影響が見られた.教育を担う看護師は小規模病院の2年目看護師の特性に合わせて指導するにあたり【2年目看護師が指導内容を理解し成長を促すような方法や支援の困難】,【2年目看護師が自ら学習し,思いを表出できるような教育を担う看護師の教育遂行力の不足】の2年目看護師をどのように理解して支援すれば良いのか,理解するためにはどのような知識や経験が必要となるのかについて困難を認識していた.そして2年目看護師の指導を行っていく上では,【2年目看護師への指導機会・時間的制約のある勤務体制】や【2年目看護師の研修プログラムや評価を行うチーム教育体制の未整備】が関連していることが明らかとなった.このことから小規模病院において2年目看護師の特性を十分に理解し,教育を担う看護師と2年目看護師の世代差に生じる価値観の違いを認識し,指導方法を十分に検討することの重要性が示唆された.
本研究では,特定地域および少数施設の小規模病院における2年目看護師の院内教育を担う看護師を対象とした質的研究であり,これを小規模病院の2年目看護師の教育を担う看護師が抱える困難とした結果の一般化には限界がある.今後は対象地域や病院規模を拡大した検討が必要である.そして,今回の研究では,2年目看護師の教育を担う看護師の役割や役職,教育の方法を条件づけていないため,それらの条件を限定した場合には異なる結果が得られる可能性も考えられる.また,本研究の中では2年目看護師の教育を担う看護師が抱える困難の背景にはプロセスに似た構造もみられたが経過を捉えた研究方法ではないことでそれらは明らかにされなかった.加えて,本研究では教育者側からの視座であり,2年目看護師の属性を捉えておらず,その属性による困難の相違があるか明らかになっていない.今後,小規模病院における2年目看護師教育の組織化に向けて,2年目看護師の属性や2年目看護師の教育を担う看護師が抱える困難がどのようなプロセスを経ているのかを比較し,研究に活かしていきたい.
本研究を行うにあたり,ご協力いただきました研究参加者の皆様には心より感謝申し上げます.また,研究全般にわたり,ご指導と温かい言葉で励ましてくださいました諸先生方に深く感謝申し上げます.
また,本研究は2023年度聖泉大学大学院看護学研究科における修士論文の一部に加筆修正したものであり,第50回日本看護研究学会学術集会において発表した.
なお,本研究における利益相反は存在しない.