神奈川県立博物館研究報告―人文科学―
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初期狩野派の北野天神縁起絵巻(下)
相澤 正彦
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2001 年 2001 巻 27 号 p. 43-76

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抄録

当館所蔵の北野天神縁起絵巻(全六巻、現四十四段)、その考察の続編である。前回は第一章として、その内容構成について紹介したが、今回は第二章として段落構成や図様の特殊性を、第三章に詞章の系統を、第四章では諸本との相関性、さらに第五章として小論の一番の眼目である絵師の問題について言及した。当本は室町時代における新たな天神縁起の展開の中でとらえることができ、中でも杉谷神社本・佐太天満宮文明本系に親近する要素が認められる。詞書自体が杉谷神社本に類似し、室町期に特立新加された段落構成や図様も杉谷神社本系に準ずる要素が強いが、他の既成の段については鎌倉期以来の諸本を広く参照している。詞書執筆者は未詳だが、全段にわたり青蓮院流、あるいは三条流の書風に統一されている。絵師も未詳だが、狩野元信周辺の人物であろう。初期狩野派絵巻としては元信の個人様式より流派様式の範疇に入る。その中では『二尊院縁起絵巻』(一五四一年頃)に近いが、絵師は別人である。制作は同じ十六世紀半ばに措定でき、詞書の書風にも同調する。画趣は極めて独創的で、室町期の平俗的な天神縁起諸本とは別種の格調を保持し、桃山期へ向かう気宇大きい生動感にもあふれ、まさに中世天神縁起の棹尾を飾る作品となっている。

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