2017 年 2017 巻 46 号 p. 63-70
簡易的なエンコウガニの雌雄判別法を確立するために、相模湾産のエンコウガニの甲形態を計測し、それらの計測値を統計学的に解析した。その結果、甲のアスペクト比、及び甲幅に対する眼窩長径の比率については有意な雌雄差が検出されなかった。一方、腹節に関する2種類の形態パラメータには、完全に分離することはできないものの、有意な雌雄差があることが分かった。したがって、腹節に関するこれらの形態パラメータを組み合わせて解析することで、エンコウガニの雌雄判別が可能になることが示された。本研究の雌雄判別法の化石個体への適用可能性を検討するために、下部更新統上総層群飯室層産の性別未知のエンコウガニ化石2個体の腹節形態の解析を行った。その結果、いずれの個体とも雌雄を判別することができた。本研究の雌雄判別法は、雌雄差が明瞭に現れる鋏脚が脱落した甲のみからその性別を判別可能であるという点において、非常に重要である。