神奈川県立博物館研究報告(自然科学)
Online ISSN : 2189-6720
Print ISSN : 0453-1906
2017 巻, 46 号
神奈川県立博物館研究報告(自然科学)
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
表紙・目次
短報
原著論文
  • 折原 貴道, 中村 恭子, 村田 知章
    2017 年 2017 巻 46 号 p. 7-23
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2021/04/30
    研究報告書・技術報告書 フリー

    神奈川県南西部に位置する真鶴半島の先端部はお林とよばれる魚つき林が広がっており、人工林ながらスダジイ、クスノキなどの常緑樹の極相が形成されている。お林にはクロマツ・アカマツの大木も多く残存しているが、長年、マツ枯れへの対策が必要な状況となっている。しかし、お林内のマツ類やスダジイと共生する外生菌根菌の多様性や生育状況に着目した、大型菌類(きのこ類)の通年調査は十分に行われていない。本研究では、お林および真鶴半島から北西6 km に位置する南郷山のアカマツ自然林を対象に、大型菌類を主とする子実体の発生状況の通年調査と外生菌根の形成状況に関する調査を行った。野外調査およびデータ収集は、地域児童らを中心に、地域住民、学校教員、そして博物館のボランティアスタッフらが協働する市民参加型調査として行われた。その結果、お林では129 種156 標本の菌類と6 種6 標本の変形菌類が記録されたが、明らかにマツ類の外生菌根菌であったのは、そのうちの1 種1 標本のみであった。一方、南郷山では、菌類は58 種72 標本、変形菌類は2 種2 標本が記録され、そのうちマツ外生菌根菌は7 種9 標本で、採集された菌類全体の約13% を占めていた。しかし、土壌中の菌根の感染状況を解析したところ、お林マツ林においても一定数の菌根の形成が見られ、子実体が著しく少ない環境下でも、マツ菌根菌が確かに生育していることが確認された。今後、お林に生育する菌根菌の菌根形成状況を改善させることができれば、森林の自助能力を有効活用した、お林の景観保全に繋がると期待される。

  • 矢野 倫子, 矢野 清志, 山本 幸憲, 折原 貴道
    2017 年 2017 巻 46 号 p. 25-38
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2021/04/30
    研究報告書・技術報告書 フリー

    2013年7月から2016年9月まで静岡県東部に位置する伊豆半島の14地点において計22回の変形菌調査を行い、27属107種を確認した。そのうち、静岡県新産は15属34種であった。その中には現在までに日本国内でも報告例が少ない希種ハーベイイトホコリDianema harveyi、オオメダマホコリColloderma robustum も含まれていた。また、伊豆半島における変形菌発生の季節性や発生基物の傾向、および種多様性について考察した。

報告
  • 大西 亘
    2017 年 2017 巻 46 号 p. 39-50
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2021/04/30
    研究報告書・技術報告書 フリー

    神奈川県の南西端に位置する真鶴半島先端部の樹林、“御林(おはやし)”において、樹林内の林床に生育する植物と直上の空間を占める樹木種の種多様性と分布を量的に把握するための調査を行った。樹林内の遊歩道に沿って連続する107 の調査区間を設定し、調査区間ごとに林床に生育する下層植物と直上の空間に広がる上層の樹木をそれぞれリストアップした。調査区間全体で下層には維管束植物178 分類群が、上層には27 分類群がそれぞれ記録された。出現植物種に基づく調査区間のクラスタリングの結果、下層では谷と尾根の地形が植物の出現パターンに強く影響していた。また、下層、上層の出現パターンは全体として異なっており、上層部に広がる樹木の種組成が必ずしも下層植物の組成と関連していないことが示された。

資料
  • 大西 亘, 田中 徳久, 勝山 輝男
    2017 年 2017 巻 46 号 p. 51-55
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2021/04/30
    研究報告書・技術報告書 フリー

    プレパラートに封入された現生植物の葉脈標本936点について、デジタル画像を含むデータベースの整備を行うとともに同定を確認し、目録として整理した。整理した葉脈標本は後期中新世から鮮新世の植物化石の研究者であった故尾崎公彦氏が自身の研究のために作製したもので、尾崎氏の死後約30年にわたり博物館に保管されていた。今回の整理によって尾崎公彦葉脈標本コレクションには日本国内に産する樹木を中心として、中国、ヨーロッパ、および北米を原産地とする樹木を含む832分類群を含むことが確認された。デジタル画像と分類群名を新たな属性として付与し、利便性を高めたことで、研究及び教育普及活動等における活用が期待される。目録の全体とデジタル画像については、神奈川県立生命の星・地球博物館のホームページで公開する予定である。

  • 田中 徳久, 安田 重雄
    2017 年 2017 巻 46 号 p. 57-61
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2021/04/30
    研究報告書・技術報告書 フリー

    イギリスのキュー植物園の植物標本庫(K)とフランスの国立自然史博物館の植物標本庫(P)で見出された英国人採集家のビセットにより採集されたイワシャジンの標本について報告した。この標本は、1876年に採集された標本で、おそらくもっとも古くに採集されたイワシャジンの標本である。神奈川県では、著名な外国人により多くの植物が採集されているが、本報で示した標本は、神奈川県の植物誌研究史上、重要な標本であることを示した。

原著論文
資料
奥付、裏表紙
feedback
Top