桐生大学紀要
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緑色蛍光タンパク質発現大腸菌 BL21(DE3) を利用した培地を構成する カゼイン分解物に含まれるタンパク質発現誘導物質の同定
小林 葉子
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2024 年 35 巻 p. 37-45

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抄録
 大腸菌のタンパク質の発現系は,有用なタンパク質を得るために用いられている.緑色蛍光タンパク質(GFP) は,緑色蛍光を有し,その蛍光を測定することによりタンパク質の発現を検出することができる.lac オペレーター を連結した T7 プロモーターの下流に GFP 遺伝子を挿入した大腸菌タンパク質発現用プラスミド pET19b で形質転 換した大腸菌 BL21(DE3) を,国産ミルクカゼイン分解物を用いた Luria-Bertani (LB) (LB-HI) 培地で培養すると GFP が産生され,米国産ミルクカゼイン分解物を用いた LB (LB-Bact) 培地では GFP は産生されなかった.国産と米国 産のミルクカゼイン分解物の混合比の異なる LB 培地では,国産ミルクカゼイン分解物の含有率の増加に伴い GFP の発現量も増加した.国産あるいは米国産ミルクカゼイン分解物に含まれる糖類を分析した結果,国産ミルクカゼ イン分解物にはラクトースが含まれていた.LB-Bact 培地にラクトースを添加した場合,国産ミルクカゼイン分解 物に含まれるラクトースと同等の濃度で GFP の発現が見られた.以上のことから,LB-HI 培地を用いた時の GFP の発現は,国産ミルクカゼイン分解物に含まれるラクトースにより誘導されたことが示唆された.以上のことよ り,大腸菌を培養する培地基剤を変えることにより,安価で安定したタンパク質の発現が可能になると考えられ る.
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© 2024 桐生大学・桐生大学短期大学部
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