学校教育研究
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第3部 実践的研究論文
教育実習運営を支える学校組織文化に関する一考察
安藤 哲也
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 32 巻 p. 118-

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抄録
 G県における小・中学校教員の養成は,国立大学(G大学)教育学部が一定の役割を担い,その教育実習はG大学教育学部の附属学校が中核となり行っている。一方,公立学校でありながら,G大学教育学部の特別実習協力校として多数の教員養成を着実に実践している一つの事例として,公立A小学校を挙げることができる。特別実習協力校とは,附属学校同様,初めて教育実習を行う学生に対し,その後に行われる教育実習に自立的に取り組めるように,教育実習を行う上での基礎的・実践的な知識・技能を身に付けさせる役割をもつ学校である。そのため,教育実習期間は他の公立学校での実習期間よりも長く設定されている。このように附属学校と同じ役割を期待される特別実習協力校であるが,公立学校ゆえに定期的な人事異動があり,教育実習指導に優れた教員だけが勤務しているわけではない。それでもA小学校は1976(昭和51)年度から今日までの40年間という長きにわたり,特別実習協力校としての教育実習運営を継続・発展させている。筆者はA小学校のような様相を呈する重要な要因として,教育実習運営の基底に存在する学校組織文化に着目したい。なぜなら,A小学校の教員集団は毎年度10名前後の人事異動がありながら,新任の教員を含めた全校体制による教育実習生の指導の充実を目指して,長年にわたり同僚教師間で支え合う「協働文化」の構築を追究してきているとみなし得るからである。  そこで本稿では,A小学校の教育実習運営の基底に存在する学校組織文化がどのような内実を備えているのか,筆者がA小学校の教員を対象に実施した事例調査により収集したデータに基づき,その具体的様相を明らかにするとともに,全校体制による教育実習を運営するための示唆を得たい。
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