学校教育研究
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第1部 <特集>教師の実践知の批判的継承と教師教育
グローバル時代に求められる教師像
金井 香里
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 33 巻 p. 7-

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抄録

技術の発展によって人,物,資本,情報等が国境を越えて自由に行き来するようになり,社会のありようは大きく変容している。いわゆるグローバリゼーション(globalization)が進行しているのであり,政治,経済,文化等の分野では,グローバリゼーションによってもたらされるさまざまな影響が話題にされるようになって久しい。広田(2016)によれば,現在,世界的に多くの国民国家に対し大きなインパクトを与えているのは,経済次元での新自由主義的なグローバリゼーションである。新自由主義の立場をとる論者らは,国家による規制の排除,自由市場原理の適用を望ましいものとして主張しており,教育もその対象に含まれる。一方,グローバリゼーションによる社会の変容は,従来,国民国家としての統合の装置として機能していた近代の学校教育に対し,そこでの教育のあり方の見直しを迫ることにもなっている(120頁)。 当然ながら,グローバリゼーションは,日本の学校教育にもさまざまな影響を与えている。それは,教育改革における主要な課題の一つが,グローバル化,情報化の進んだ知識基盤社会ないし生涯学習社会で必要な能力の育成となっている点から明らかである。加えて昨今,米国,英国等で行われていたニュー・パブリック・マネジメント(New Public Management;以下,NPM)型学校改革が日本においても進んでいる点から伺えよう。あるいは,学校の置かれた地域や教室の子どもたちの国籍,人種,民族,宗教等の多様化の現状,各学校,教師による国際理解や多文化共生のための教育実践の取り組みからも見てとれる。本稿では,こうしたグローバル時代に学校教育を担う教師に焦点をあて,どのような教師像が求められているのかについて探究することにしたい。グローバリゼーションと並行して情報化,多文化化,価値多様化,不確実化の加速する状況下で,教師はどういったヴィジョン,そのためにどのような認識が求められるのかについて検討を試みることにする。

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© 2018 日本学校教育学会
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