2021 年 15 巻 3 号 p. 211-218
高度約20 km の成層圏から超広域のエリアをカバーする成層圏プラットフォーム(HAPS: HighAltitude Platform Station)への期待が高まっている.最大で半径100 km のエリアに無線区間1 ms以下の低遅延で通信サービスを提供可能であり,また今後急速な普及が予想されるドローンや空飛ぶクルマが飛行する上空エリアへの通信プラットフォームとしても有望である.このため,我が国のBeyond 5G 戦略の一環としても期待されている.また,上空を飛行するソーラープレーン等に搭載される無線中継局から普段使用するスマートフォンと直接通信可能である.災害時にもその影響を受けることなく,ユーザも特別な端末を持ち歩くことなく普段使用しているスマートフォンで即座に通信可能であることから,究極の災害対策プラットフォームとしても位置付けられる.本稿では,成層圏プラットフォーム及びHAPS 移動通信システムの概要を述べるとともに,更なる発展に向けた研究開発動向を解説する.