2017 年 2017 巻 1 号 p. 107-111
本稿は第九回バイオフィリアリハビリテーション学会において行った講演をまとめた。表題の通り、現在のリハ医学の中核になっている理論に関する総括調査を引用し、神経筋促通法について自身の経験を反映した結果、効果が得られないとしてまとめた。
著者の経歴は、東京帝国大学で工学博士になり、その後1959年に東京大学で医学博士になった。リハビリテーション(リハ)科の医師としては神奈川県立七沢リハビリテーション副院長、長野県の鹿教湯リハビリテーション研究所長を務め、その後2005年の11月まで介護老人保健施設「湘南の丘」施設長として勤務した。
「患側優先の神経筋促通法によるリハビリテーションを見直す必要がある。」とする主題を以下に示す項で述べた。
1.第9回大会基調講演、
2.リハビリテーション医学、
3.神経筋促通法、
4.神経筋促通法の効果、
5.片麻痺であまり効果のない例、
6.神経幹細胞の新しい知見、
7.神経幹細胞の障害部位への誘導理論、
8.片麻痺患者に有効と思われる例、
9.高齢障害者の歩行再獲得、
10.両側で片麻痺上腕の訓練、
11.痙性、拘縮の予防、
12.回顧と反省
神経筋促通法の理論や手技は進歩に伴い、片麻痺の改善を期待させるが、診察現場で片麻痺患者を例に40年昔と現在と比較すると、診察結果は昔と変わっていない.神経筋促通法が治療に有効との感じを受けない。患側優先で総合的な協調運動を行う事は、運動パターンの正常化には適するとされるが、実用に繋がるまでに時間を要し、その間に健側・躯幹の廃用をきたす。健側優先の法では患側優先の場合よりも健側であるため放電による促通の効果が大きいとみられ、リハの途中で、廃用状態で臥床継続状態になってしまう患者が少なく、実用に繋がる事が多い。近年の神経幹細胞の新生力に関する研究から、神経幹細胞が、損傷部位の機能回復に役立つ事も解明され、健側優先の運動リハの持つ有効性の機序解明も期待できる。また、神経伝達物質産生細胞として、神経系リハの領域に影響を及ぼすと考察する。