Biomedical Research on Trace Elements
Online ISSN : 1880-1404
Print ISSN : 0916-717X
ISSN-L : 0916-717X
総説
ニューロジンクの陽と陰
玉野 春南 武田 厚司
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 31 巻 3 号 p. 92-97

詳細
抄録
亜鉛は脳の発育、機能と密接に関係し、亜鉛摂取不足は行動異常の一因となる。脳内亜鉛の一部はZn2+として機能する。認知活動を司る海馬では、神経細胞内外のZn2+濃度はそれぞれ〜100 pMと〜10 nMである。細胞外Zn2+動態は認知機能とその低下の両方に関与し、細胞外グルタミン酸ならびにアルツハイマー病の原因物質と考えられているアミロイドβ1-42により大きな影響を受ける。海馬細胞外Zn2+濃度は加齢に伴い上昇する。上昇する原因は明らかでないが、この上昇により、神経細胞内Zn2+恒常性の破綻は容易となり、認知機能を低下させ、さらに神経を変性させる。したがって、神経細胞内Zn2+恒常性の破綻は加齢時の脳疾患のリスクファクターとなる。一方、細胞内Zn2+結合タンパク質であるメタロチオネインは細胞内Zn2+恒常性維持に重要であり、海馬の機能とも密接に関係する。本総説では、海馬におけるZn2+の機能と毒性に焦点を当て、これまでの研究を概説する。
著者関連情報
次の記事
feedback
Top