必須微量元素セレンは主にセレンタンパク質中のセレノシステイン(Sec)残基として重要な生理作用を担う。Secの形成はセレノリン酸に依存し、この化合物は、セレノリン酸合成酵素(SPS)によって、ATP、セレニド、水を基質として合成される。微量セレン化合物が、多量に存在する硫黄化合物による競合を免れて特異的に代謝されるためには、厳密な酵素反応制御が重要であると考えられ、セレニドと結合して生理的なセレン基質をSPSに直接提供するセレン供給タンパク質の存在が指摘されてきた。そこで、動物において、L-Sec特異的に作用してセレンを脱離させるセレノシステインリアーゼの詳細な解析を行い、活性中心Cys残基によるセレン転移反応を明らかにした。また、細菌においてはチオレドキシンがセレンタンパク質生合成における亜セレン酸還元に重要であることを示した。