抄録
日本の貴重なコケの森No. 30 に選定(2020 年9 月5日)された「立山室堂ならびに弥陀ヶ原一帯」の自然環境や蘚苔類を紹介する.本地域の蘚苔類については,標高約2,000 m からヤマトヤハズゴケ(Inoue 1985:原記載),雷鳥沢からオリンピックゴケ(Akiyama 1997, Iwatsuki et al.2004),雷鳥沢や室堂平からキヌシッポゴケモドキ(Iwatsuki 1956, 坂井2006,2011)などの希少種の報告がされている.また,室堂平周辺の蘚苔類相(坂井2008,2011),ミズゴケ相(坂井2017)の報告がされており,高山性のコケ植物が豊富である.
室堂平の遊歩道沿いの転石にはギボウシゴケ科の種やキシッポゴケなどが生育し,土上にはミヤマスギゴケやヤノウエノアカゴケ,チャボナガダイゴケなどが見られ,ハイマツの樹幹にはキノウエノコハイゴケやミヤマチリメンゴケ,カリフォルニアテガタゴケが着生している.湿原や流水には,ササバゴケやウカミカマゴケ,ウキヤバネゴケなど,地獄谷の硫黄成分の多い流水中にはチャツボミゴケが見られる.玉殿岩屋の中ではヒカリゴケ,板状節理の隙間にはケヘチマゴケ,イシヅチゴケなどが生育する.残雪が7 月下旬頃まで残る大谷では,ガッサンクロゴケが大きな石上に多く見られる.天狗平から弥陀ヶ原の雨天時に水が流れる凹みの土手上部にはヤマトヤハズゴケが生育し,池塘の岸部にはイボミズゴケやサンカクミズゴケ,コバノミズゴケなど,湿った土上にはミヤマミズゴケやホソバミズゴケが群落をつくっている.美松坂の針葉樹林の林床にはコセイタカスギゴケやイワダレゴケ,タチハイゴケ,フジノマンネングサといった大型の種が目立っている.