抄録
タカネツノゴケ(Anthoceros fusiformis Austin)は,日本に6 種分布するツノゴケ属の1 種である.1)葉状体はロゼット状でなく,縁が羽状に切れ込んだ帯状であり,2)無性芽を持たず,3)胞子体が1 cm 以上に成長し,4)胞子求心面のY 字マークの両側に沿って表面の模様を欠く帯状の平滑な部分があることで日本産の同属他種と区別される.本種は北米西海岸と日本に隔離分布し,特に日本ではツノゴケ類としては例外的に山地にのみ産するとされてきた.その一方で,近
年になって栃木県や北海道の人家周辺にも生育することが報告されている.生育地域や生育環境が大きく異なるこれらの植物を同一の種として扱うべきか,疑問が生じた.本発表では,タカネツノゴケについて新たな形態学的・分類学的・分子系統学知見を報告する.