蘚苔類研究
Online ISSN : 2424-2624
Print ISSN : 1343-0254
東アジアにおけるジャゴケ(ゼニゴケ目:苔類)同胞種内の遺伝的分化
井藤 賀操山口 富美夫近藤 勝彦De-Yuan HongShi-Liang Zhou船本 常男出口 博則
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1999 年 7 巻 8 号 p. 249-256

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抄録
日本,台湾,中国大陸に産するジャゴケConocephalum conicumの遺伝的変異を合計7集団8遺伝子座で調べ,種内の遺伝的多様性および各集団内の遺伝的多様性を推定した.種内の遺伝的多様性(Hes)は0.142,各集団内の遺伝的多様性の平均値(mean Hep)は0.117であった.これらの値は本種が多様に分化した種であることを示している.集団間の遺伝的な分化の程度を示す値(Gst)は0.121であった.つまり,本種の遺伝的多様性は集団内の分化によることがこの値から明らかとなった.本調査では,2つの遺伝的に異なるグループの存在を明らかにすることができた.一つは中国,台湾,日本の本州に産した合計3集団のまとまりで,もう一つは日本の対馬と本州に産する合計4集団のまとまりである.前者のまとまりは後者のまとまりと比べ,各集団間の遺伝距離が小さいという結果が得られた.対馬に産する各集団はそれぞれが地理的に近距離であったにもかかわらず,遺伝子交流のないことがロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)をコードする遺伝子座から判断できた.
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1999 日本蘚苔類学会
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