抄録
「進化」においても「発達」においても、ヒトは重力に抗して二足で「自立」し行動するようになる。直立姿勢では、脊椎を重力に対し平行な状態に保つために、脊椎を支持する筋を常時活動させている。「丹田」として意識に上る部位はほぼ立位時の身体重心に相応する。それ故自分の身体の重心をコントロールする技でもある。と同時に四足歩行では下垂しても腹壁で支えられていた内蔵を、立位では骨盤を取り巻く骨盤底筋・腹筋などの筋収縮により下方への落下を防ぐ必要がでてくる。これらの筋に力を籠める、いわゆる「丹田に力を入れる」ことを意識的して習慣にすることは、歩行時の転倒を予防し、長期的には人間の尊厳において最も必要な「排泄の自立」を保証するための最低限の筋肉の維持が可能になる。重力場での二足歩行直立への進化の研究は、高齢社会を生き抜く知恵を私たちにもたらすだろう。