武道学研究
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大学女子柔道選手における合宿時の心理的コンディション評価:POMSを用いた検討
鈴木 なつ未渡辺 涼子目崎 登
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2016 年 49 巻 1 号 p. 49-56

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抄録

【目的】柔道は,年間を通して試合が行われる一方で,その間の期間に合宿が行われることが多く,適切なコンディショニングを行うことが重要である。トレーニング負荷と休息は,そのバランスが崩れると,オーバートレーニングを引き起こすことが考えられる。よって選手のコンディションを評価することは,オーバートレーニングを予防するために非常に重要である。そこで本研究では,大学女子柔道選手における合宿時のコンディションついて心理的コンディションに着目し検討することを目的とした。

【方法】対象は,大学女子柔道選手11名とした。5日間の合宿期間中に,合宿初日,合宿最終日(最終日)の2回,日本語版POMSTM(Profile of Mood State: 気分プロフィール検査,金子書房)を用い,心理的コンディションを評価した。POMSは65の質問から構成され,回答を点数化し,「緊張-不安」,「抑鬱-落ち込み」,「怒り-敵意」,「活気」,「疲労」,「混乱」の6つの尺度をそれぞれに得点化し,気分や感情を総合的に評価することができる質問紙である。さらに,「活気」以外のネガティブな尺度から「活気」得点を引き100を足して算出する,気分障害を表すTMD(Total Mood Disturbance)得点も算出した。

【結果および考察】「緊張-不安」得点,「抑鬱-落ち込み」得点,「怒り-敵意」得点,「活気」得点,「混乱」得点の項目において,合宿2日目(1回目)と合宿最終日(2回目)で変化は認められなかった。「疲労」得点は,合宿初日と比べ,最終日には有意(p<0.05)に高い値を示した。気分障害を表すTMD得点は,合宿初日と合宿最終日変化は認められなかった。先行研究においては,トレーニング量の増加に最も鋭敏に変化する尺度が疲労と活気であることが示されている。本研究では「活気」得点に変化は認められなかったが,「疲労」得点は合宿初日と比べて合宿最終日に変化が認められた。本研究で検討した合宿は期間が短期であったが,練習メニューや練習量などが気分尺度に影響した可能性が考えられる。

【結語】本研究では,合宿前と比べ合宿後に疲労得点で明らかな変化が認められた。合宿時においては疲労尺度や気分障害が増大すると考えられることから,合宿期間における心理的コンディションの評価は重要であると考えられる。

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