武道学研究
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西洋武道修練者に見られる東洋的価値観
シュミットアンソージ
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1987 年 20 巻 1 号 p. 10-17

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抄録

本研究の目的は二つである。先ず東洋的価値観をもつ被験者のグループと西洋的価値観を有するグループとの間に見られる文化的価値観体系の差を研究することである。第2の目的は,同じ東洋的価値観を有するグループ内での差を研究することである。研究された仮説は,東洋的価値観を有している被験者は西洋的価値観を有している被験者よりも,EAST-WEST Questionnaireと題するアンケートで,より高いスコアを得た。なお,本アンケート調査での高いスコアは東洋的価値観とのより一致を示している。
方法
本アンケートは米国のネブラスカ大学の学生,130名に実施されたものである。学生全員は水泳の授業,空手の授業,又は大学の松濤館空手部のいずれかに属した者である。第1班は水泳の授業をとっている学生32名である。第2班は空手初級コースをとっている学生32名である。第3班は空手中級コースをとっている学生35名である。第4班は1ケ月から9ケ月訓練をした8級から6級を有する空手部々員である。第5班は1.1年~4.2年訓練しつづけてきた5級~1級を有する空手部部員である。第6班は,4.2年~20.8年訓練しつづけてきた初段~三段を有する空手部部員である。
結果
各班の(East-west Questionnaire)の平均点を比較すると,空手道の修練にともない東洋的価値観が高まっていくという一般的傾向が見られた。Completely randomied ANOVAの分析は各班の平均点間で有意な差が見られた。(F(5,124)=2.79,P<0.5)。Post-hoc Tukey testによって,第1班(水泳)(Xs=50.91)と第6班(空手部員有段者)(XB=67.00)又は第4班(XBKS=54.06)と第6班の間に有意な差が見られた。
水泳の学生と初・中級空手コースの学生(第1~3班)のアンケートのスコアは低く,中級・上級の空手修練者(第5と6班)のスコアは高くなっていくことが分った。

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