佛教文化学会紀要
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論文
北山淳友の「如来蔵」理解――「絶対的意識」との比較
嶋田 毅寛
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2019 年 2019 巻 28 号 p. L161-L174

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抄録

『仏教の形而上学』は北山淳友のハイデルベルク大学留学中に独の哲学者ヤスパースに提出された彼の学位論文である。その著作内にはヤスパースの『哲学』に見られる重要概念が散見される。そして『仏教の形而上学』における重要概念の一つであり、大乗仏教における重要な思想でもある <如来蔵 >が北山によりヤスパースの重要概念の一つである<絶対的意識 >として捉えられていることが興味深い。しかし北山が『哲学』から直接着想を得たということはあり得ない、なぜなら北山がヤスパースに『仏教の形而上学』を提出したのがヤスパースの『哲学』刊行以前だからである。『哲学』における用語が多用されていることと、ヤスパースに師事したことが全く無関係であるとも考えられず、おそらくはヤスパースの講義、あるいは彼に学位論文の指導を受けている最中に着想を得ていたのだろうと筆者は見ている。
筆者がタイトルを「北山淳友の『如来蔵』理解――『絶対的意識』との比較」としたのも、本研究がヤスパースに直接師事した北山によって自身の研究にどのようにヤスパースの哲学用語が生かされているかといことに関する一考察だからであり、そして同時に、ヤスパースの仏教的側面についてという筆者自らの研究の手がかりの一つとも捉えているからである。

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