2003 年 54 巻 9-10 号 p. 341-350
中期更新世指標テフラTB-8及びKy3の再記載を行った.これらのテフラはともに高屈折率の斜方輝石を含むことから同一テフラとして対比されてきたが,一方で屈折率のレンジが大きく異なるという指摘が以前からなされていた.また最近では両者は対比されないという意見もあらわれた.筆者らが両テフラを詳細に観察した結果,TB-8は6層のユニットから構成され,それぞれのユニットで斜方輝石の屈折率特性が異なること,Ky3の屈折率特性はTB-8のいくつかのユニットの混合で説明できることが明かとなった.またTB-8及びKy3のそれぞれの上位に挟在するTB-9及びKy3.5も角閃石の屈折率特性など両者の特徴が一致することから,TB-8とTB-9の組み合わせがKy3とKy3.5の組み合わせに対比されることが確実となった.TB-8 (Ky3) は関東平野の南部から中部にかけて南北に幅をもって広く分布している.指標テフラの少ない首都圏において,このテフラは重要な鍵層となる.