2007 年 58 巻 3-4 号 p. 117-132
火山フロントから60 kmの背弧域にある新潟県飯士火山の層序を見直し,海洋酸素同位体ステージ 7 (MIS7)に噴出した爆発的噴火産物を新たに見いだした.この堆積物はカミングトン閃石含有斜方輝石普通角閃石デイサイトを本質物に含む残留角礫相・塊状軽石流相・成層火砕サージ相からなり,越後湯沢火砕流堆積物と命名した.本堆積物のフィッション・トラック年代の測定結果は 0.21 ± 0.07 Ma であった.また,構成物の特徴と層序的位置から,この堆積物が関東北部で記載されていたプリニー式降下堆積物,真岡軽石の給源相と判断され,これを飯士真岡テフラと再定義した.飯士真岡テフラの上位の溶岩及び下位のテフラからの既報放射年代値も考慮すると,飯士真岡テフラの噴火年代は 0.22 ~ 0.23 Ma に絞り込める.更に,真岡軽石を含むとされた茨城県大洗の見和層中部の堆積相と構成物組成を検討した結果,見和層中部は従来考えられていたような MIS6 の低海面期の堆積物ではなく,MIS7.3 ~ 7.1 の潮流口‐河川堆積物からなることを明らかにした.