2013 年 64 巻 5-6 号 p. 139-150
要 旨 物質循環のトレーサーとしての地球科学的知見を得ると同時に,福島第一原子力発電所事故後の地域住民の不安感の払拭にも貢献するため,地質調査総合センターにおいてエアロゾル中の放射性核種の観測を2012年も継続して行った.前報告(本誌,63,107-118)に引き続き2012年1月から2012年12月までの観測データを報告する.放射性Cs同位体のエアロゾル濃度は,2012年4月より低下しており,北よりの風から南よりの風に変わり降雨の日が多くなったことと良く対応していた.また、幾つかの濃度増加は強風時の再飛散によるものと推定された.前報告では2011年のエアロゾル中Cs-137濃度に対する気象の影響は不明瞭であったが,本研究では後方流跡線解析を適用することで,濃度変化が気象状況の影響を受けていたことをより明瞭に示すことができた.また,濃度既知の試料を本研究において再測定した結果,測定上の大きな問題点は無いものと考えられた.