地質調査研究報告
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64 巻, 5-6 号
地質調査研究報告
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論文
  • ―秋吉地域の例―
    太田 充恒, 南 雅代
    2013 年 64 巻 5-6 号 p. 121-138
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/04/19
    ジャーナル フリー
    要 旨 地質調査総合センターは日本において,細粒砂(< 180 μm)を用いた全国規模の53元素濃度の地球化学図を作成してきた.河川堆積物中の元素濃度の空間分布は地質や鉱山の分布を忠実に反映している.しかし,石灰岩岩体は例外であり,河川堆積物中の元素濃度にほとんど影響を与えていない.そこで我々は,この理由を明らかにすべく,日本最大規模の石灰岩岩体である秋吉台から採取した河川堆積物中の元素濃度並びに鉱物組成を調べた.流域に石灰岩を含む地域で採取された細粒砂(< 180 μm)は,CaO濃度が高く,そのX線回折データには強い方解石のピークが存在した.堆積物中の元素濃度の粒径依存性を調べたところ,粒径が細かくなるほど方解石の存在度が高くなりかつCaO濃度も増加した.しかし,石灰岩が流域に70%を超える面積を占める試料が示すCaO濃度は,予想される値(~50 wt. %)に比べて,10–20 wt. %と非常に低い.この矛盾した結果は,石灰岩岩体は化学風化によって水に溶けやすいが,物理風化・削剥を受けにくい事によって説明できる.すなわち,石灰岩岩体から供給される砕屑粒子の供給量が他の岩体の供給量に比べ圧倒的に低い事を意味する.また,SrはCaとよく似た化学的挙動を示す事が期待されるにもかかわらず,一部の試料中のSr濃度はCaO濃度や方解石のピーク強度とは良い相関関係を示さなかった.これは,炭酸カルシウムに対して過飽和な水から、秋吉石灰岩とは異なるSr濃度を持つ方解石が形成され、河川系に供給されたことを意味する.
  • 金井 豊, 土井 妙子, 桝本 和義
    2013 年 64 巻 5-6 号 p. 139-150
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/04/19
    ジャーナル フリー
    要 旨 物質循環のトレーサーとしての地球科学的知見を得ると同時に,福島第一原子力発電所事故後の地域住民の不安感の払拭にも貢献するため,地質調査総合センターにおいてエアロゾル中の放射性核種の観測を2012年も継続して行った.前報告(本誌,63,107-118)に引き続き2012年1月から2012年12月までの観測データを報告する.放射性Cs同位体のエアロゾル濃度は,2012年4月より低下しており,北よりの風から南よりの風に変わり降雨の日が多くなったことと良く対応していた.また、幾つかの濃度増加は強風時の再飛散によるものと推定された.前報告では2011年のエアロゾル中Cs-137濃度に対する気象の影響は不明瞭であったが,本研究では後方流跡線解析を適用することで,濃度変化が気象状況の影響を受けていたことをより明瞭に示すことができた.また,濃度既知の試料を本研究において再測定した結果,測定上の大きな問題点は無いものと考えられた.
  • 中江 訓
    2013 年 64 巻 5-6 号 p. 151-190
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/04/19
    ジャーナル フリー
    要 旨 西南日本福井県中央部に位置する南条山地の主要域には,玄武岩・石灰岩・チャート・泥岩・砂岩などの多様な岩石から構成される堆積岩複合岩体が分布する.南条山地におけるこれらの岩石のうち27 地点の露頭から採取したチャートについて,含有される放散虫化石の検討を行った.その結果,冠山地域では17 地点26 試料からSpumellaria 目ならびにEntactinaria 目が卓越する三畳紀群集とNassellaria 目が卓越するジュラ紀群集が産出した.本報告ではこれらの放散虫化石群集を記載するとともに,その種構成に基づき冠山地域に分布するチャートの地質時代は前期三畳紀(Olenekian)〜中期ジュラ紀(Bajocian)に至ると結論した.
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