新潟県糸魚川市東部には第四紀更新世の火山岩類が広く分布しており,下位より猿倉層(新称),江星山層,梶屋敷層,高峰層(新称)からなる.下部更新統の猿倉層は安山岩–玄武岩質安山岩の火山砕屑岩からなる.江星山層はデイサイト–玄武岩質安山岩の火山砕屑岩,貫入岩からなり,およそ1.3–1.2 MaのK–Ar年代を示す.岩石学的性質及びK–Ar年代は西頸城半深成岩類の鉾ヶ岳岩体と共通する.梶屋敷層は高峰層と同質な火山岩礫を多く含む堆積岩で,挟在する大谷川凝灰岩はおよそ1 Maのフィッション・トラック年代を示す.高峰層は梶屋敷層と一部指交関係で上位に位置し,安山岩–玄武岩質安山岩の火山砕屑岩からなる.上部の凝灰角礫岩本質岩塊のK–Ar年代は0.65 Maであり,高峰層の火山活動は少なくとも1 Maから0.65 Maの期間にわたる.火山岩の全岩化学組成から江星山層は特徴的に中カリウム系列の低カリウム側の組成領域にあり,他の層とは区別される.