地質調査研究報告
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愛知県西三河平野における過去100 万年間の浅海生珪藻化石群集の変遷
納谷 友規 阿部 朋弥水野 清秀
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2024 年 75 巻 1 号 p. 21-59

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抄録

愛知県西三河平野で掘削された3本のボーリングコア,GS-HKN-1,GS-NSO-2,TK No.1コアに産出する珪藻化石群集を明らかにした.各コアから産出する珪藻化石群集は,海生および汽水生珪藻を主体とする群集と淡水生珪藻を主体とする群集の繰り返しからなる.各コアにおいて珪藻化石群集帯を設定して(それぞれ下位よりHKN1-1 ~ 8 帯,NSO2-1 ~ 4 帯,TK1-1 ~ 6帯), 各群集帯の珪藻化石群集の特徴を記載するとともに古環境を推定した.海生および汽水生珪藻を主体とする珪藻化石群集からなる海成層の年代や酸素同位体ステージ(MIS)との対比を検討した結果,西三河平野では過去およそ100万年間に,少なくとも9層準の海成層が挟まることが示された.各時代の浅海生珪藻化石の消長に着目すると,Cyclotella stylorumが前期更新世の末期,Lancineis rectilatusがMIS15 もしくはMIS17,Diploneis cf. bombusがMIS11の産出を最後にそれよりも上位では消滅し,Paralia fenestrataがMIS19よりも上位から産出することが明らかにった.これらの珪藻化石の生層序はこの地域の地下更新統の層序対比に有効である.各コアから産出した主な珪藻化石の顕微鏡写真を,同定の根拠とした文献・図版を付記して示した.

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© 2024 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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