文化看護学会誌
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Print ISSN : 1883-8774
原著論文
訪問看護師が行う排便ケアに影響を与える在宅高齢者と家族介護者の価値観
辻村 真由子石垣 和子
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2018 年 10 巻 1 号 p. 1_51-1_60

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抄録

本研究の目的は,訪問看護師が行う排便ケアに影響を与える在宅高齢者と家族介護者の価値観を明らかにすることである。
3年以上の訪問看護経験を有する訪問看護師14名を対象として,個別の半構造化インタビューを実施した。インタビュー内容は,排便ケアを必要とする在宅高齢者(以下,高齢者とする)と家族介護者への支援過程とし,22の高齢者と家族介護者の事例への支援過程が述べられた。得られたデータについて,質的帰納的に分析した。
その結果,排便ケアに影響を与える高齢者の価値観として,【便が出ないと大変なことになるので便が出ることは重要だ】【排便という生理的な現象は個人的な営みなので家族であっても手を借りるものではない】【自分や家族の生活を脅かされたくないので,訪問看護師には排便をコントロールしてほしい】などの8のカテゴリーが明らかとなった。また,家族介護者の価値観として,〔便が出ないと腸が詰まって大変なことになる〕〔排便の世話は嫌ではあるが高齢者との関係性があるので断れない〕〔排便の世話は特別に大変であるので訪問看護師に任せたい〕などの8のカテゴリーが明らかとなった。
以上より,排便が高齢者の生活の充足感において大きな意味をもつことや,高齢者と家族介護者との関係性に基づいて排便の意思決定がなされていることを踏まえた看護支援の重要性が示唆された。

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