文化看護学会誌
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Lothlorien Therapeutic Communityにおける治療アプローチにみる東洋と西洋の統合
井上 万寿江
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2015 年 7 巻 1 号 p. 1_30-1_33

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抄録

 近年,欧米の医療分野では禅仏教やチベット仏教,インドのヴィッパーサナー瞑想等をストレス低減方法として用いている。南西スコットランドにある治療共同体のLothlorien Therapeutic Communityでは,西洋心理学と仏教心理学を取り入れた治療的アプローチをとっている。他者に対する共感と寛容がコミュニティの基盤にあり,精神的健康問題からの回復の手助けとなっている。さらに,マインドフルネスやリラクゼーションの手段としてTara Rokpa TherapyやR. D. Laing (1995)の実存的-現象学的方法,Loren Mosherの地域精神保健活動方法などを採用していた。このような治療アプローチによって,利用者は,自分自身に対する気づきと他者との関係の築き方を学んでいた。お互いを思いやりながら共同生活を行なうことは,入居者にとって社会とのつながりや人間関係を築く上で大切な体験となっていた。今後も,欧米において,仏教心理学における理論面での調査が行われ,臨床における仏教の心理療法への応用が進んでいくものと思われる。一方,仏教に影響を受けた日本では,欧米と同様に臨床における仏教心理学の応用が進むと考えられるが,他者に対する共感と寛容といった文化的価値観からコミュニティにおけるメンタルヘルスケアおよび支援ネットワークを再考する必要がある。

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