放送研究と調査
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世界を読み解く国際比較調査ISSP
その意義と課題
村田 ひろ子
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キーワード: GESIS, アーカイブ
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2020 年 70 巻 11 号 p. 36-48

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抄録

NHK放送文化研究所が加盟している国際比較調査グループISSP(International Social Survey Programme)の調査の概要について,担当者からみた意義や課題とあわせて報告する。 ISSPは1984年に発足し、約40の国と地域の調査機関が毎年,共通の質問で世論調査を実施している。日本からは,1993年にNHK放送文化研究所が加盟し,「政府の役割」「社会的不平等」「家庭と男女の役割」など多岐に渡るテーマで調査を行ってきた。同じテーマの調査を10年ごとに実施するのが特長で,国どうしの比較とともに,10年前、20年前の結果と比較して時系列の変化を捉えることができ,世界の研究者からも高く評価されている。 調査票は加盟国の活発な議論を経て,3年がかりで作成される。筆者も2016年の「政府の役割」調査の設計をスウェーデンやフランスなどのメンバーと担当し、「政府による個人情報収集の是非」や「男女平等の推進は政府の責任か」などを問う新たな質問を提案して採用された。 ISSPは,アジアやアフリカ、中東地域の加盟国が少ないことや調査予算の確保が難しいことなど課題に直面している。イギリス英語の調査票を母国語に翻訳して調査を行う難しさも抱えている。様々な課題はあるものの、各国の国民を代表するサンプルを用いた精度の高い調査データは,今後も世界の研究などに寄与していくであろう。2021年に実施する調査に新型コロナウイルス関連の質問を盛り込むことも決まり、ISSP調査に対する期待と価値は一層高まると思われる。

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© 2020 NHK放送文化研究所
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