放送研究と調査
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シリーズ戦争とラジオ‹第6回› 国策の「宣伝者」として
アナウンサーたちの戦争(前編)
大森 淳郎
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2020 年 70 巻 8 号 p. 2-17

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抄録
本稿では、戦時ラジオ放送におけるアナウンス理論に焦点を当てる。先行研究に共通する大きな見取り図は、主観を排して淡々とニュースを読む、善きものとしての「淡々調」が、太平洋戦争勃発とともに生まれた、主観を前面に押し出して読む、悪しきものとしての「雄叫び調」に取って代わられたというものである。しかし今回、これまでの定説とは異なる次の知見を得た。 ➀「淡々調」も、日中戦争勃発後には国民を戦争に誘導するために最適なアナウンス理論として位置づけられていたのであり、その点においては「雄叫び調」と同じであること。 ②これまで「雄叫び調」は、太平洋戦争開戦を告げる臨時ニュースから自然発生的に始まったとされてきたが、それはつくられた伝説であり、開戦前から理論構築されていたこと。 本稿では、当時のアナウンサーたちの内面に分け入りながら上記知見を明らかにしてゆく。内容ではなく話し方によって国民を戦争に動員する。それはどんな挑戦だったのだろうか。
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© 2020 NHK放送文化研究所
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