放送研究と調査
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70 巻, 8 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • アナウンサーたちの戦争(前編)
    大森 淳郎
    2020 年 70 巻 8 号 p. 2-17
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/16
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿では、戦時ラジオ放送におけるアナウンス理論に焦点を当てる。先行研究に共通する大きな見取り図は、主観を排して淡々とニュースを読む、善きものとしての「淡々調」が、太平洋戦争勃発とともに生まれた、主観を前面に押し出して読む、悪しきものとしての「雄叫び調」に取って代わられたというものである。しかし今回、これまでの定説とは異なる次の知見を得た。 ➀「淡々調」も、日中戦争勃発後には国民を戦争に誘導するために最適なアナウンス理論として位置づけられていたのであり、その点においては「雄叫び調」と同じであること。 ②これまで「雄叫び調」は、太平洋戦争開戦を告げる臨時ニュースから自然発生的に始まったとされてきたが、それはつくられた伝説であり、開戦前から理論構築されていたこと。 本稿では、当時のアナウンサーたちの内面に分け入りながら上記知見を明らかにしてゆく。内容ではなく話し方によって国民を戦争に動員する。それはどんな挑戦だったのだろうか。
  • 長野・千曲川決壊 住民の「8割避難」を可能にしたものは何か?
    入江 さやか
    2020 年 70 巻 8 号 p. 18-34
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/16
    研究報告書・技術報告書 フリー
    「令和元年台風19号(東日本台風)」は、東日本各地に記録的な豪雨をもたらした。気象庁は、過去最多となる13の都県に「大雨特別警報」を発表。長野県の千曲川や福島県の阿武隈川など8つの県の71河川・128箇所で堤防が決壊、13の都県に被害が及ぶ広域災害となった。 NHK放送文化研究所では、台風19号で被害を受けた長野県長野市、宮城県丸森町・石巻市、福島県本宮市・いわき市の5つの自治体において、浸水被害が出た地域の住民3,000人を対象に、郵送法による世論調査を実施した。本稿では、このうち、長野市の調査結果を検討した。 千曲川が決壊した長野市長沼地区では、回答者の8割が自宅を離れて避難場所などへの「立ち退き避難」をしていた。避難を始めたタイミングも早く、千曲川の水が堤防を越える前に大半の住民が避難していた。 立ち退き避難を始めたきっかけを聞いたところ、避難勧告などの「防災情報」や、「周囲の人の声がけ」、「テレビの警戒呼びかけ」をあげた人が多かった。 また、長沼地区の住民の6割は、過去の水害経験や、洪水ハザードマップ、地区内に設置された想定浸水深を示す標識などを通じて、自宅が浸水するリスクを認知していた。 未明に大河川が決壊したにも関わらず、この地域では人的被害が抑えられた。その背景には、住民の防災リスクの認知と、防災情報に対する的確な反応があったと考えられる。
  • 「新型コロナウイルス」前に実施したウェブ調査とデプスインタビュー調査から
    渡辺 誓司, 宇治橋 祐之, 酒井 厚 酒井 厚
    2020 年 70 巻 8 号 p. 36-69
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/16
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    NHK放送文化研究所の調査から、学校現場ではデジタルメディアの利用が進む様子がみてとれるが、もうひとつの学習の場である家庭ではどのようなメディアを使って学習が行われているのか。2019年秋~冬、中学生の家庭学習におけるデジタルメディアの利用に焦点をあて、中学生とその母親を対象に行ったウェブ調査とデプスインタビュー調査の結果を報告する。 ウェブ調査では、家庭学習を行っている中学生のうち、その半数以上が家庭学習でデジタルメディアを利用していた。スマートフォン、タブレット端末、パソコンの利用が多く、英語(英単語の検索や音声教材など)、総合的な学習の時間や社会(いずれも検索サイトでの調べものや資料動画の閲覧)でよく利用されていた。ただ、家庭学習の教材としては、教科書や参考書などの紙媒体の利用の方が多かった。 また、家庭学習でデジタルメディアを利用している中学生は、利用していない中学生よりも、勉強へのやる気が高く、自分が理解できるように工夫していて成績も良いこと、母親がデジタルメディアを利用した学習を推奨している家庭の中学生は、消極的な家庭の中学生よりもやる気が高いことが示された。 デプスインタビュー調査では、自分専用のスマートフォンを所有する中学生の全員が、英単語の検索など、辞典や事典がわりにスマートフォンを学習で利用していた。また、元教師や塾の講師が説明する「授業動画」は、理解できるまで繰り返し視聴するなど、好評だった。 今回の調査は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う一斉休校前に実施したが、デジタルメディアとの親和性が高いと推察されるウェブ調査の対象者においても、そのすべてが家庭学習でデジタルメディアを利用しているわけではなかった。新型コロナウイルスの影響でオンライン学習へのニーズが高まる中で、デジタル機器を所有していない家庭が存在することなどもふまえ、学習格差が拡大しない配慮が求められる。
  • 青木 紀美子
    2020 年 70 巻 8 号 p. 70-77
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/16
    研究報告書・技術報告書 フリー
    市民とのエンゲージメントを柱とするEngaged Journalismの実践者たちのインタビュー連載の第3回は、ジャーナリストであり、ジャーナリズムの研究者でもあるトム・ローゼンスティール氏。現在はワシントンのシンクタンクAmerican Press Instituteの所長で、公共サービスとしてのジャーナリズムを担うニュースメディアが存続してくために必要な変革の方向性を探る調査研究をしている。ローゼンスティール氏は、必ずしも「エンゲージメント」という表現でくくってはいないが、デジタル時代のジャーナリズムは市民の力を生かす知の連携であるという考えに立ち、メディアは「耳を傾ける文化」への転換、オーディエンス=情報の受け手を中心に位置づける(audience-centered / audience centric)変革が必要だとしている。それは具体的には何を意味するのか、長年、メディアとメディアを取り巻く環境の変化を見つめ、ジャーナリズムの原則と役割を考察してきた知見をもとに話をしてもらった。
  • 「外国人との共生社会に関する世論調査」から
    岡田 真理紗
    2020 年 70 巻 8 号 p. 78-87
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/16
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿では、NHKが2020年3月に実施した全国電話世論調査の結果をもとに、日本の社会に外国人が増えることへの国民の意識や外国人と共生するための課題などについて述べる。外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法が施行されて2020年4月で1年になるが、日本で働く外国人が増えることについては、賛成する人が70%と多数を占めている。しかし、自分の住む地域に外国人が増えることに賛成する人は57%にとどまる。日本に外国人が増えることに賛成する人でも5人に1人は、自分の住む地域に外国人が増えることに反対している。 自分の住む地域に外国人が増えることへの不安では、「言葉や文化の違いでトラブルになる」と「治安が悪化する」を挙げた人が多く、国や自治体に取り組んでほしいことでは、「生活上のルールを教えること」が最も多い。一方、外国人が増えることへの期待では、「新しい考えや文化がもたらされる」が最も多く、自分の住む地域に外国人が増えることに反対する人でも約6割が、外国人の増加に何らかの期待を抱いている。 外国人労働者が家族をともなって日本で暮らす「家族帯同」については、条件を緩和して今より広く認めるべきだという人は33%にとどまるが、日本で暮らす外国人の子どもに対しては、国や自治体の財政負担が増えたとしても日本語を十分に教えてほしいと思う人が79%にのぼっている。
  • 高橋 浩一郎, 菅中 雄一郎
    2020 年 70 巻 8 号 p. 88-91
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/16
    研究報告書・技術報告書 フリー
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