抄録
本稿の目的は、厳しい経営環境にある放送局の組織の持続可能性をどう担保するかについて、経営、組織、さらに指標といった論点について、経営学という新たな視点から、その課題の再定義および克服に向けた方途を探ることである。既存のテレビの編成論、視聴率論においては、「マーケティング」が「視聴率至上主義」と重なられる概念として否定的にとらえられてきた。また「マーケティング」と「イノベーション」は異なる組織によって担われる、対立的な概念と論じられた例もあった。本稿では、現代の経営学を参照し、「マーケティング」と「イノベーション」の定義が時代に添い現実に応じて更新されていること、両者には「顧客の価値創造」という共通項があり現代の厳しい経営環境では対立的概念でなくむしろ重複的概念として「相互乗り入れ的」に機能すべきこと、そのための指標が総合的に構築されることの重要性などを論じた。求められているのは、両概念を軸にした、新たな経営、編成の再定義・再構築に資する理論と実践である。