放送研究と調査
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これからの"放送"はどこに向かうのか? Vol.6
公共放送・受信料制度議論 〈2020 年5 月~ 2021 年1 月〉
村上 圭子
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2021 年 71 巻 4 号 p. 2-25

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抄録

2021年の1月、NHKと受信料制度の今後を考える上で重要な2つの文書が公表された。1つは総務省「放送を巡る諸課題に関する検討会」の「公共放送の在り方に関する検討分科会」のとりまとめ、もう1つは、「NHK経営計画(2021年-2023年)」である。本稿では、この2つの文書が公表されるに至るまでの動向や議論を整理する。その上で、分科会で議論が先送りされた論点や、議論の枠外に置かれた論点にも注目していく。 こうした論点に視野を広げるべきと考えるのは、筆者が、現在分科会で議論されている論点が、重要だと思うものの、それだけでは十分だとは考えていないからだ。その理由を以下にあげておく。 国民・視聴者のうち決して少なくない人々が、総務省やNHKが大前提とする議論の枠組みの外から、NHKや受信料制度を眺めているのではないか。NHKと民放の「二元体制」や、地上放送メディアの「放送の公共性」「ユニバーサル・サービス」の今後とこのテーマが接合されていかなければ、あるべきNHKの役割や他メディアとの役割分担が見えてこないのではないか。Society5.0やSDGs等の大きな枠組み、一方で多層化するコミュニティー単位の小さな枠組みの双方で課題解決の取り組みが広がる中、公共性を捉え直し、メディアがどういう役割を果たせるかという観点で考える必要があるのではないか。 なお、本稿が対象とする期間には様々なメディアの動きがあったが、今回は政策議論に焦点を絞って考える。

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