放送研究と調査
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71 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 公共放送・受信料制度議論 〈2020 年5 月~ 2021 年1 月〉
    村上 圭子
    2021 年 71 巻 4 号 p. 2-25
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
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    2021年の1月、NHKと受信料制度の今後を考える上で重要な2つの文書が公表された。1つは総務省「放送を巡る諸課題に関する検討会」の「公共放送の在り方に関する検討分科会」のとりまとめ、もう1つは、「NHK経営計画(2021年-2023年)」である。本稿では、この2つの文書が公表されるに至るまでの動向や議論を整理する。その上で、分科会で議論が先送りされた論点や、議論の枠外に置かれた論点にも注目していく。 こうした論点に視野を広げるべきと考えるのは、筆者が、現在分科会で議論されている論点が、重要だと思うものの、それだけでは十分だとは考えていないからだ。その理由を以下にあげておく。 国民・視聴者のうち決して少なくない人々が、総務省やNHKが大前提とする議論の枠組みの外から、NHKや受信料制度を眺めているのではないか。NHKと民放の「二元体制」や、地上放送メディアの「放送の公共性」「ユニバーサル・サービス」の今後とこのテーマが接合されていかなければ、あるべきNHKの役割や他メディアとの役割分担が見えてこないのではないか。Society5.0やSDGs等の大きな枠組み、一方で多層化するコミュニティー単位の小さな枠組みの双方で課題解決の取り組みが広がる中、公共性を捉え直し、メディアがどういう役割を果たせるかという観点で考える必要があるのではないか。 なお、本稿が対象とする期間には様々なメディアの動きがあったが、今回は政策議論に焦点を絞って考える。
  • 『北の国から』美術プロデューサー・梅田正則
    広谷 鏡子
    2021 年 71 巻 4 号 p. 26-44
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    「オーラル・ヒストリー」の方法論を用いて、関係者の証言をもとに「テレビ美術」についての論考を発表してきたが、今回は、1981年から2002年まで、連続ドラマとドラマスペシャルとして放送された『北の国から』(フジテレビ制作)の美術に着目した。ドラマの舞台である北海道にオープンセットを建設して撮影したこのドラマにおける「美術」の役割は、重要かつ多岐にわたった。本稿では、美術プロデューサー・梅田正則の証言を通じて、それを浮かび上がらせる。 主人公の家族が移り住んだオープンセットの「家」が、どのような発想のもとに生み出され、人が生活する場としてのリアリティーを増していくかを、ドラマの時系列に沿ってたどると、数多くの工夫や苦労が明らかになった。ドラマは「嘘」だが、それを「本物らしく」表現するのが美術の基本、と梅田は言う。元々は映画の小道具係を志し、黒澤明作品を美術の教科書と仰ぐ梅田は、映画に負けない美術をこのドラマで目指した。妥協しない美術のスタンスは、スタッフや出演者の本気度を高め、『北の国から』がテレビ史に残るドラマとなる一翼を担ったのではないか。
  • NHK学校放送番組 ネット展開の25年
    宇治橋 祐之
    2021 年 71 巻 4 号 p. 46-69
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
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    NHKの学校教育向けサービスのポータルサイト「NHK for School」は、1996年に前身の「学校放送オンライン」が公開されて以来、年々利用者を増やしながら25年の節目を迎えた。 2018年度の「小学校教師のメディア利用と意識に関する調査」では、8割以上の教師がウェブサイト「NHK for School」を認知、7割に授業での利用経験があった。コロナ禍の休校時には、文部科学省の「子供の学び応援サイト」での推奨もあり、多くの家庭からもアクセスを集めた。 ネット展開の歴史を振り返ると、利用者が増えてきた背景には、放送番組を単にネットに置き換えるのではなく、研究者と学習に必要なメディアの要素の再検討を進めて骨格をつくり、利用者のニーズを把握・反映させながら随時改良を加えてきたことがみえてきた。 児童・生徒の1人1台端末が実現しつつあり、「個別最適な学び」と「協働的な学び」が求められる中、学校放送番組のネット展開の歴史を振り返ることで、今後の公共メディアにおける教育サービスのあり方を考える。
  • 現地住民向け放送の実態~蘭印を例に
    村上 聖一
    2021 年 71 巻 4 号 p. 70-87
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
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    太平洋戦争下、南方の占領地で日本軍が行った放送について検証している本シリーズ、今回は、現在のインドネシアに当たる蘭印で行われた放送の実態を探った。 蘭印は、石油などの資源地帯として戦略上、重要だった地域で、日本軍は、占領後、20近くの放送局を開設し、一部を除き、終戦まで放送を続けた。この地域はジャワやスマトラといった島ごとにラジオ放送の発達状況が異なり、また、陸軍、海軍が担当地域を分けて放送を実施した。このため、本稿では、それらの条件に応じて、放送実施体制や番組内容、聴取状況にどのような違いが生じたのかといった点に着目しつつ、検討を進めた。 このうち、陸軍担当地区を見ると、戦前からラジオ放送が発達していたジャワでは占領後、速やかに放送が始まったのに対し、スマトラでは開局が遅れ、放送局数も少数にとどまった。また、海軍担当地域のセレベス・ボルネオは、戦前、まったく放送局がなく、軍が放送局を新設する必要があるなど、放送の実施体制は地域によって大きく異なった。 しかし、聴取状況を見ると、防諜のために軍が受信機の多くを接収したこともあって、いずれの地域でもラジオの普及はわずかにとどまった。そして、現地住民が放送を聴いたのは主に街頭ラジオを通じてだった。番組も、各地域とも、集団聴取に適した音楽演奏やレコード再生が中心となった。 各放送局の担当者は、具体的な宣伝方針が定まらない中、手探り状態で放送を継続する必要に迫られた。放送を通じて占領政策への理解を得るという目標が達成されたか検証できないまま、占領地での放送は終焉を迎えた。
  • 東山 浩太
    2021 年 71 巻 4 号 p. 88-93
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
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