放送研究と調査
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『日本の素顔』の制作技法 第3回 映画的技法からの離脱
全体の量的分析から
宮田 章
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2021 年 71 巻 5 号 p. 2-25

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抄録

日本のテレビドキュメンタリーの基礎を築いた『日本の素顔』(1957~64)の制作技法を解明するシリーズの第3回。今回は、アーカイブに映像と音声がそろって残る全193本のテクストについて、映像と言語との関係に的を絞った量的分析を行う。得られた知見の中で特に重要と考えられるのは次の5点である。 ①制作・放送された6年半の間、ほぼ一貫して言語化(映像に伴う言語の量が増えること)が進行している。61年度以降は現代のTDでも珍しくない水準に達している。 ②インタビューを用いることで、同時代の記録映画的な技法から離脱している。 ③全期を通じてナレーションを用いる説明的モードが卓越する。このモードが『素顔』を形式的、技法的な意味で啓蒙的にしている。 ④61年度以降、技法的な転換が見られる。それまで『素顔』の言語化を牽引していたインタビューなど被取材者の声の伸びが止まる。以後、ナレーションの増加がさらなる言語化の主因となり、『素顔』を技法的に一層説明的、啓蒙的にしている。 ⑤『素顔』末期に同時録音の自生音を多用するそれまでにないテクストが出現している。この技法は、『素顔』後のNHKのTDの制作技法に影響を与えた可能性がある。

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© 2021 NHK放送文化研究所
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