放送研究と調査
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『日本の素顔』の制作技法  第5回 情報番組への傾斜
泰平ムードの中で
宮田 章
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2022 年 72 巻 10 号 p. 38-67

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抄録
テレビドキュメンタリーの制作技法は、それが制作・放送されていた時代の支配的思潮の影響を色濃く受ける。日本の戦後史の大きな曲がり角であった「60年安保」の前後で、当時放送されていたNHKのテレビドキュメンタリー『日本の素顔』(1957~64)の制作技法は大きな変化を見せている。高度経済成長が進行する中で、あるべき社会、あるべき国家の姿を多くの人が真剣に論じあった59~60年の時期の『日本の素顔』は、『奇病のかげに』(59.11.29)、『臨時労働者』(60.12.4)といった経済成長がもたらす矛盾を鋭く衝いたルポルタージュや調査報道の力作を多数輩出した。しかし安保闘争が終息し、なお続く経済成長の中で「所得倍増」の掛け声が現実味を帯びてくると、人々は社会や政治についての主体的な関心を急速に失っていく。「暗い話」は抜きにして、経済成長によってもたらされる豊かさと便利さを私的に享受しようとする気分が支配的になってゆく。1961年度に放送された『日本の素顔』の各回は、現状を大枠で肯定しながら、経済成長によって「近代化」する社会の諸相を常識的な見地から紹介する情報番組という性格を増している。
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© 2022 NHK放送文化研究所
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