放送研究と調査
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72 巻, 10 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 東京2020 パラリンピック放送の伝える力
    渡辺 誓司, 中村 美子
    2022 年 72 巻 10 号 p. 2-27
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    1964年に続き2度目の自国開催となった東京2020パラリンピック大会は、世界各国の新型コロナウイルスの感染拡大により1年延期され、無観客という異例の事態の中で開催された。NHK、民放など日本の放送業界は一丸となり、日本のパラリンピック放送において最長となる約700時間のテレビ放送を行った。東京大会の放送を検証し、共生社会への変革において放送の果たす役割について考える。NHKは、パラリンピック放送では最長の590時間の放送を行った。「パラリンピックをスポーツとして放送する」という方針のもと、総合テレビでは、終日ライブでパラリンピック放送を行った。東京大会ならではの取り組みとして障害のあるリポーターの起用や、スタジオのキャスターやゲストなどの出演者においても、ジェンダーや障害者を配慮した人選が行われた。また、出場選手ほぼ全員にあたる226人分の選手紹介のVTRが制作され、放送あるいは東京大会の特設サイトで配信された。VTRでは、主に自らの障害やこれまでの競技経験、東京大会の目標が、全編をとおして選手自身の言葉で語られた。このほか、障害とともに生きる海外選手の「レジリエンス」に注目し、視聴者に共生社会について考えるきっかけを与えるようなコーナーも組み込まれていた。 民放は、大会期間中初めて地上テレビで競技を含めたパラリンピック番組を放送した。競技そのものを中心に据え、スポーツの持つ力を伝えた局や、大会までの選手との関わりから得た思いやパラリンピックからの学びをもとに大会の意義を伝えようとした局など、各局が工夫を凝らした放送を行った。また、選手を紹介するVTRでは、共通して、アスリートとしてのすごさとともに人間ドラマが描かれていた。また、番組中に放送された広告を見ると、スポンサー企業としてパラリンピックを応援する姿勢をアピールするものの、広告に生活者として障害者を登場させるケースは極めて少なかった。東京大会は、NHKと民放ともに、選手のパフォーマンスに焦点を当て、オリンピックと同じスポーツとして放送された。これが今後の放送のモデルと考える人も多いだろう。しかし、パラリンピックは、オリンピックとは異なる価値を持っているはずである。苦しいトレーニングを続けている選手らは、スポーツに出会い幸せを実感していることをテレビを通して発信していた。障害の有無にかかわらず、すべての人が何かに出会い夢を追うチャンスが得られれるような社会こそ、共生社会ではないだろうか。このことをどう表現できるのか、放送事業者の課題として残されている。
  • 2022年全国個人視聴率調査から
    斉藤 孝信, 山下 洋子, 行木 麻衣
    2022 年 72 巻 10 号 p. 28-36
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    NHK放送文化研究所が、テレビとラジオのリアルタイム(放送と同時)視聴の実態を把握する目的で、2022年6月6日(月)~12日(日)に実施した「全国個人視聴率調査」の結果を報告する。テレビ全体の1日あたりの視聴時間量は3時間41分である。時間量は年代によって差があり、60代では4時間以上、70歳以上では6時間前後と、高年層では長時間にわたって視聴されている一方で、男性の30代以下と女性の20代以下では2時間未満と短い。また、1週間に5分以上、テレビを視聴した人の割合も、男性の60代以上と女性の50代以上では90%を超えて高いが、男性の13~19歳(70%)、20代(55%)、30代(74%)と、女性の20代(76%)は全体よりも低い。ラジオ全体の1日の聴取時間は30分である。調査を行った1週間に5分以上ラジオを聴いた人は、全体では36.0%で、男性の50代(43%)と60代(54%)、70歳以上(56%)、女性の60代(46%)と70歳以上(47%)で全体より高い。今回の調査では、テレビやラジオのリアルタイム視聴が、60代以上の高年層でとくに盛んに行われていることが確認された。
  • 泰平ムードの中で
    宮田 章
    2022 年 72 巻 10 号 p. 38-67
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    テレビドキュメンタリーの制作技法は、それが制作・放送されていた時代の支配的思潮の影響を色濃く受ける。日本の戦後史の大きな曲がり角であった「60年安保」の前後で、当時放送されていたNHKのテレビドキュメンタリー『日本の素顔』(1957~64)の制作技法は大きな変化を見せている。高度経済成長が進行する中で、あるべき社会、あるべき国家の姿を多くの人が真剣に論じあった59~60年の時期の『日本の素顔』は、『奇病のかげに』(59.11.29)、『臨時労働者』(60.12.4)といった経済成長がもたらす矛盾を鋭く衝いたルポルタージュや調査報道の力作を多数輩出した。しかし安保闘争が終息し、なお続く経済成長の中で「所得倍増」の掛け声が現実味を帯びてくると、人々は社会や政治についての主体的な関心を急速に失っていく。「暗い話」は抜きにして、経済成長によってもたらされる豊かさと便利さを私的に享受しようとする気分が支配的になってゆく。1961年度に放送された『日本の素顔』の各回は、現状を大枠で肯定しながら、経済成長によって「近代化」する社会の諸相を常識的な見地から紹介する情報番組という性格を増している。
  • 沖縄4局・「復帰」50年特番の分析
    七沢 潔
    2022 年 72 巻 10 号 p. 68-71
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
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