放送研究と調査
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調査研究ノート 雲仙・普賢岳噴火災害映像素材の保存 その意義を考える
入江 さやか
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2022 年 72 巻 3 号 p. 40-45

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抄録

1991(平成3)年6月3日、噴火活動を続けていた長崎県の雲仙普賢岳で大規模な火砕流が発生した。この火砕流によって、NHKを含む報道各社の取材クルー、同行していたタクシーのドライバー、地元の消防団員、警察官、海外の火山学者43人が犠牲となった。火砕流に対する「避難勧告」の出ている地域で取材活動を行った結果、メディア以外の人々をも巻き込む惨事となった。報道に関わる者は、このできごとを決して忘れてはならない。大火砕流から30年目となる2021年、放送文化研究所は、長崎局に保管されていた雲仙普賢岳噴火災害の取材テープ約3,000本をデジタル化した。本稿は、これらの映像素材を保存する意義について考察した。 今回デジタル化した映像素材は、三つの点で保存の意義があると考える。第一は、報道関係者だけでなく、消防団員、警察官なども災害に巻き込まれた事実を記憶にとどめること。第二に、今後発生する火山災害に備えて、安全管理を検討する貴重な「教科書」とすること。第三に、長期間にわたる火山学者とメディアのサイエンス・コミュニケーションの貴重な記録であること、である。この大災害を風化させないためにも、今後、素材のリスト化と内容の精査を進め、活用を図っていきたい。

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© 2022 NHK放送文化研究所
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