この数年の間に、障害の有無にかかわらず、テレビ放送などのコンテンツを楽しむことが出来るサービスが登場してきている。NHKでも、特定のスポーツ中継で、手話CG実況、ロボット実況・字幕といったユニバーサルサービスを実施している。一方で、AI等を活用した新しい技術を社会実装するにあたり、倫理的な問題や法律的な兼ね合いなど、時代の変化と共に検討すべき新しい課題も生まれている。文研とNHK放送技術研究所は去年4月から共同で、倫理的・法的・社会的課題(ELSI)の視点から、ユニバーサルサービスを実用化する際の諸課題について研究を重ねてきた。
そもそも「ELSI」とは、“Ethical, Legal and Social Issues”の略。新しい技術を研究開発し、それを社会実装する際に生じうる、技術的課題以外のあらゆる課題を指している。我々は特に、ユニバーサルサービスの研究開発の視点から、メディア事業者におけるELSIへの向き合い方を検討している。今年度は、国内外の企業や学会などの外部動向や、過去事例、技研の研究者へのインタビュー調査を実施し、課題の抽出を行った。
次年度は、特にユニバーサルサービスのユーザーとなる方々や外部のサービスやELSIの専門家と連携し、事例収集、課題解決に向けた検討をさらに進める予定である。
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