抄録
今後のメディア動向を占うデジタルネイティブの先駆けとして注目される「Z世代」。文研はZ世代とテレビの今のリアルな距離感とこれからの関係を探ることをめざし、文研フォーラム2023で「Z世代とテレビ」と題したシンポジウムを行った。
登場した大学生たちの発言からは、従来の据え置き型テレビでリアルタイム視聴することがいまの学生の生活に合わないこと、情報源を目的に応じて使い分けていることが分かった。Z世代の多彩な情報源の中でも存在感があったのがSNSで、中でも10代後半を中心に利用率が高かったのがTikTokだった。政治系の動画も視聴されていたが、専門家からはショート動画ならではのミスリードやフェイクニュースの危険性の指摘も出た。
またZ世代の特徴とされがちな「タイパ(タイムパフォーマンス)」について、学生へのインタビューと文研の調査で実態に迫った。倍速視聴はすべてのコンテンツではなく、内容によって行われること、切り抜き動画の視聴については時間短縮だけが目的ではなく、編集した人の「面白いものを見せたい」という思いへの信頼も背景にあった。
最後に、学生たちから「これからのテレビ」に向けて提言があった。「テレビはストレスフリーになって」「テレビは謙虚になって」など、Z世代の合理的なメディア選択の対象に入るためのテレビへの期待と不満が明らかになった。