放送研究と調査
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「市民力」を活かすジャーナリズムの挑戦
民主主義の危機が深まるアメリカの事例から
青木 紀美子
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2023 年 73 巻 12 号 p. 20-43

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抄録
NHK 放送文化研究所の「文研フォーラム2023」では,市民の力を活かすジャーナリズムの可能性を模索するアメリカの「シビック・メディア(Civic Media )」とも呼ばれる実験的な非営利メディアやプロジェクトの代表の話を聞いた。 その実践に共通する点は,人々が生きるために必要な情報や、よりよい判断や行動をとるために役立つ情報を提供することを重んじていることである。また,情報の収集や編集判断の過程に当事者をはじめ市民を招き入れ,立場や背景の違いを越えててつながる機会をつくることを重視し,さらには,地域に関わる政策決定や課題解決への市民の参画を後押ししている。ジャーナリスト中心のジャーナリズムではない,「コミュニティー中心のジャーナリズム(Community ー Centered Journalism) 」であるともいわれる。 情報の届け方でも,活用する人が利用しやすい方法や媒体を優先し,携帯電話のショートメッセージ,ガイドブック,データベース,対話・交流イベントなど,ニーズに応じて柔軟に考えている。また,メディアばかりでなく,図書館や公民館,住民団体など,情報の蓄積や共有に関わるさまざまな活動主体が強みを持ち寄って力をあわせることで,社会をつなぐ、より信頼性の高い情報のエコシステムができる,という考え方でも一致している。 それが,ローカルニュースの衰退による情報の空白の拡大や誤・偽情報の拡散と浸透,深まる社会の分断を押し返し,民主主義を支えることにもつながるという考え方に立っている。本稿ではこうした考えに基づく試みやそのインパクトについて,実践者たちの言葉を通して伝える。
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© 2023 NHK放送文化研究所
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