抄録
2022年11月、PBI(Public Broadcasters International,国際公共放送会議)が東京で開催された。放送だけでなくインターネットを通じた情報発信を続ける海外の公共メディアを調査しているNHK放送文化研究所の海外メディア研究グループでは、この「PBI Tokyo 2022」に参加したアメリカ、ヨーロッパ、アジアの公共メディアの代表ら6人にインタビューを行い、それぞれが直面する課題や、情報通信メディア環境が大きく変わる中で、公共メディアが果たすべき役割などについて話を聞いた。共通の課題としては▶長期的に安定した財源の確保、▶情報源やサービスの選択肢の増加による競争の激化、▶視聴者の細分化や減少、▶信頼の低下、などが挙がった。同時に、偽情報などがあふれ、社会の分断が深まる時代だからこそ、▶信頼に足る情報を伝え、▶市民と市民をつなぐ公共メディアが必要とされている、という考えでも一致した。そうした役割について市民の理解を得るために、透明性を高め、説明責任を果たす取り組みを強化することの重要性も指摘された。6人の話は、公共放送から公共メディアへの転換を遂げていくうえでの課題を見据えた「危機感」と同時に、豊かで良質な情報空間と市民社会・民主主義社会を支えていく「使命感」をうかがわせるものだった。