植物分類,地理
Online ISSN : 2189-7050
Print ISSN : 0001-6799
日本南方木本植物資料
初島 住彦
著者情報
ジャーナル フリー

1935 年 4 巻 4 号 p. 207-212

詳細
抄録

テリハミヤマガマズミ Viburnum Wrightii ver. lucidum HATUSIMA ミヤマガマズミに比し葉の表面は殆んど無毛で非常に光澤の強い變種である.肥前の黒髪山,豊後の深邪馬溪に産する. ヒゼンガマズミ Viburnum dilatatum subsp. hizenense HATUSIMA 本種は外見ミヤマガマズミに一番近いが全種無毛(但し開葉期には葉脉上に微に認められる)なると,葉は稍厚く新芽並に切株から萌芽する若生へに生ずる毛はガマズミ式の短い毛であるので區別出來る.尚生へてゐる塲所はミヤマガマズミの生へさうにない海岸に近い山麓でポロポロノキ等の暖地性植物の多い黒松林内である.又附近にガマズミの星状毛が著しく少くなつた中間型のものを發見したのでミヤマガマズミよりもガマズミに近いものと認めた.しかしいづれにしても特徴ある種類である.肥前の眉山に生じ稀である. チヤウジガマズミ Viburnum Carlesii var. bitchuense NAKAI 從來九州豊前の香春岳にカラスガマズミを産する如く報ぜられしが今回門司市の吉岡重夫氏の好意により花のある完全なる標本を手に入るることが出來たので注意して見るとカラスガマズミではなくチヤウジガマズミであることが解つた.勿論九州本部には初見である. ビロウドウツギ Diervilla praecox LEMAIRE 本種は著者筑前の古處山の頂上附近に只一本を發見したが最初朝鮮に多いカラタニウツギかと思つたがよく注意して見ると花筒,萼筒共に毛茸を密生して見るので上記のビロウドウツギと同定した.本種は朝鮮北部,滿洲には極めて普通なものであるが我國本土には初めてヾある. コシデ,イハシデ Carpinus Turczaninovii HANCE 本種は北支那,朝鮮南部,對馬等に多い所謂滿朝分子の一要素であるが著者は肥前島原半島の南端にある加津佐村の岩戸山に多数自生してゐるのを發見した.其後吉岡氏の好意によつて上記豊前の香春岳にも分布することが解つた尚土佐國に産する外瀬戸内海の小豆島にも産する由. タチネコハギ,オホネコハギ Lespedeza pilosa var. erecta HATUSIMA ネコハギに比し莖は丈夫で斜上又は直立性なると葉が大分大きいので直に區別出來る.最初上記肥前の眉山の山麓で採集したが最近中島一男氏は對馬で採集された. コバノホヽノキ Magnolia obovata var. Yanagidana HATUSIMA 本變種は柳田由藏氏により Magonlia longifolia として霧島山産の種子より發芽した稚樹に就て發表せられたるが既に同一名の學名が SWEET氏により設定されゐるので採用出來ない.本變種はホヽノキに比して小枝は細く從つて稍密に出る傾向があつて葉は一般に小形で巾12cm.を出るものは稀であるが其他の點では別に差異は認められないので變種に止めた方がよいと思ふ.九州各地に分布してゐる.

著者関連情報
© 1935 日本植物分類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top