植物分類,地理
Online ISSN : 2189-7050
Print ISSN : 0001-6799
北半球産ウブラリア科(ユリ目)の種皮解剖とその分類学的意義
福原 達人ZABTAKHAN SHINWARI
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 45 巻 1 号 p. 1-14

詳細
抄録

Dahlgrenらの定義によるウブラリア科(Uvulariaceae, ユリ目Liliales)のうち, 北半球に分布する6属で, 各属1種から数種について種皮の解剖学的構造を記載した。ウブラリア科の種皮構造は変異に富んでおり, 細胞の形・細胞壁の肥厚や細胞内蓄積物の分布や性状に基づいて5つのグループに分かれる : (1)ウブラリア属(Uvularia)とチゴユリ属(Disporum), (2)タケシマラン属(Streptopus)とコンゴウソウ(Disporum ovaleまたはStreptopus ovalis), (3)ツバメオモト属(Clintonia), (4)ホトトギス属(Tricyrtis), (5)プロサルテス属(Prosartes)。種皮構造においては, これらウブラリア科の属とスズラン科(Convallariaceae, キジヵクシ目Asparagales)の間では, 近縁性を支持するような特徴は殆ど見られず, ウブラリア科の一部はむしろユリ科(Liliaceae)やエンレイソウ科(Trilliaceae)の属に類似した種皮構造を持っていた。プロサルテス属はチゴユリ属に含められることもあるが, その種皮構造はチゴユリ属とは大きく隔ったものであった。コンゴウソウをチゴユリ属に含める見解とタケシマラン属に含める見解とがあるが, その種皮構造はタケシマラン属のそれとよく一致した。種皮解剖に基づくグルーピングは, 胚発生学的研究やrbcLの塩基配列に基づく系統関係とおおむね整合的であり, ともに現在のウブラリア科の範囲づけを支持しない。

著者関連情報
© 1994 日本植物分類学会
次の記事
feedback
Top