植物分類,地理
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日本産ワレモコウ属(バラ科)の葉緑体DNAのPCR-RFLPsに基づく系統解析
三島 美佐子伊藤 元己
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1997 年 47 巻 2 号 p. 195-201

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抄録

日本産ワレモコウ属7種の分子データを用いた系統解析を行った。葉緑体DNAの2領域(計約8Kbp)をPCR法で増幅し, 8種類の4塩基認識酵素で処理した。その結果得られた断片長多型に基づき, ヒメキンミズヒキを外群として最節約法により系統樹を構築した。その結果, 一つの共有派生形質によりワレモコウ, ナガボノワレモコウ, ナンブトウウチソウが, 4つの共有派生形質によりカライトソウ, タカネトウウチソウ, エゾトウウチソウ, シロバナトウウチソウが, それぞれ単系統群を形成した。ナンブトウウチソウ・カライトソウ・タカネトウウチソウ・エゾトウウチソウ・シロバナトウウチソウは高山から亜高山帯にやや遺存的に生じ, 外部形態的に類似した形質状態を示す。このうちナンブトウウチソウ(岩手県早池峰山固有種)が, 低地から産地に広く分布し互いにやや類似した形質状態を有するワレモコウ・ナガボノワレモコウと単系統群に含まれた事は, 以下のいずれかの可能性を示している。1)現在の高山種に見られる形態の類似した形質状態は収斂による, 2)ワレモコウとナガボノワレモコウに見られる形態の類似した形質状態は派生的な状態である。3)ナンブトウウチソウは低地性2種のいずれかと, 高山種のいずれかとの間の雑種起原種であり, 低地性の種の葉緑体ゲノムを受け継いでいる。

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© 1997 日本植物分類学会
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